企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

ときがねウォッチング(団体のウェブサイト

森づくり活動、こう聞くとみなさんはどんな絵を思い浮かべるだろうか。50~60代の男性が中心となって、汗を流して木の伐採や草むしりをし、その妻や女性たちはお茶をいれてあげたり洗濯をしてあげたりとサポートに徹する。少なくても私には、こんなイメージがあった。  千葉県東金市。新宿駅から電車で約2時間。駅を降りるとそこは山々に囲まれた、緑豊かな情景が広がっていた。ここに位置する「ときがね湖」、ここが1996年に代表世話人の猪坂玲子さんを中心に設立された「ときがねウォッチング」の主なフィールドだ。

里山再現

ときがね湖はダム湖だ。日本経済が発展していくにつれ、宅地や海洋リゾート開発がなされ、水道用水の需要が急激に伸びた。そのためときがね湖は、水道用と工業用水の確保を目的に人口的に作られた。周囲を斜面林が囲んでおり、運動場、公園やマラソンコースがつくられている。地元の人々からも愛されている存在だ。  しかしそれゆえに、定期的な管理が必要となってくる。ときがね湖は水資源機構の用地のため、春と秋、業者の手で、きれいに機械除草されている。
そこに「待った」をかけたのがときがねウォッチングだ。「ときがね湖周辺には、まだ、トンボソウ、センブリ、リンドウ、ヤマユリ等…美しい谷津田だったころとは比べ物にならないけど、この地に昔からあった里山植物が残っている。これらを残し育てて、ここにあった里山に戻したいの。」穏やかながらもはっきりとした物腰で、玲子さんは語る。
機械の除草では、貴重な里山の植物も一緒に刈られてしまう。花時、実時まで待てば、単年度草でも翌年同じ場所に生えてくれる。一様に刈るのではなく、里山の再現のために、草それぞれに合わせて除草したい。水資源機構を説得し、「選別除草」という独自の手法を生み出した。
ときがねウォッチングのみなさん。学生も一緒に活動させていただきました。ここはフィールドのときがね湖。

女性が中心の丁寧な活動

選別除草の方法を伺った。まず用地をすみからすみまで観察し、ひとつひとつの花、植物を調べて、花時、実時を徹底的に把握する。驚くほどに多い植物の数に、10分たっても1メートルも先に進めないという。そして残したい植物をマークし、その周辺を手作業で除草する。選別除草の効果として、里山植物の復活、個体の増加、群落の形成などが見られるようになった。そして、市民の理解なども得つつある。
選別除草は本当に地道な作業だ。丁寧な作業ゆえか、会員には女性が多い。「この作業が終ったら10分休憩しようって言っても、みんなちっとも休憩しないの。10分あればもっと作業できるって思うのね」。くすっと思い出したように笑う玲子さん。活動に対しての、真摯な姿勢がそこからうかがえる。
かつてはたくさんの植物があった。栗をひろった、薪をひろった。そういう思い出がたくさんあった。あの頃の里山をもう一度同じように再現をし、次世代につなげたい。ときがねウォッチングの思いは強い。
トンボ発見。ときがね湖にたくさんの自然がもどってきました。

次世代教育

この想いを子どもたちに伝えたい。ときがねウォッチングでは小学校4年生の総合学習支援をおこなっている。授業を進める上で、モットーは「自然は大切」と言わないことだという。実際に外に出て、触れる花のにおいをかぎ、蜜を吸い、どんぐりを焼いて食べ、葉っぱをかじる。自然は体感しなければわからない。この体感こそが、玲子さんらが伝えたいことだ。体感して、自分自身でその大切さに気付いてほしい。「上級生が下級生にこの花はつんじゃいけないよ、と教えていたなんて嬉しい話をよくききます」。その気持ちは、子どもたちにちゃんと通じているようだ。

知らないことを知るよろこび

地道な作業を日々行っているときがねウォッチング。取材中も電話がなり、多忙な活動の一面がうかがえた。その原動力は一体どこからきているのだろうか。「ここは仲良しクラブじゃない。本当に自然が好き。みんなただそれだけで集まっている。知らない花、草、木、出来るだけ多く知りたいの。」ときがね湖を散策していても、玲子さんらの足取りは軽い。まるで同じように見えるニつのキク科の花。でもそれはよく見ると違いがあり、違う花なのだという。「ねえ見て。なんてかわいいお花。よく咲いてくれました」。私には気にもとめることが出来なかった花に、まるで子どものように無邪気にかけよる玲子さん。その笑顔が伝染して、おもわず私も笑ってしまった。
活動に参加して-執筆担当:長谷川 弓子 明治大学 農学部農業経済学科人、人、人…。会場は若いお母さん達と子供達で溢れていた。「お姉ちゃん、作り方教えて。」そのきらきらした眼を前にして、参加は初めてなんです…とはとても言えず、ただただおろおろするばかり。大盛況だ。
今回、ときがねウォッチングさんの行っている市民との触れ合いの活動に参加させていただいた。松ぼっくりやお花、葉っぱなどを使って、人形や置物、しおりなどを作る。最後には、子供達より、私自身が活動にのめりこんでしまった。
「コサージュできたよ!」
ときがねウォッチングさんの活動の成果はこういう形でも現れているのだと、あらためて感じた。そこには確かに、テーマに掲げる「自然を次世代へ」つながっていた。「自然が大好き。」この「大好き」に勝るものはきっとこの世の中にないと思う。そんな強いパワーをこの体験で、もらうことが出来た。