企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

多摩緑地保全地区こもれびの会

 新宿から電車に揺られること30分、都心から少し外れたよみうりランドの近くに多摩緑地保全地区はある。ここは長年人の手が加わっていない状態で、竹藪が生い茂っていて昼間でも遊歩道は薄暗く怖くて人が通れないような所だった。しかし今では整備された遊歩道で、夏でも涼しく、木漏れ日が差し込み、気持ちよくお散歩できるような環境である。ここで活動をしているのが「こもれびの会」である。

こもれびの会の目指す里山の姿

 こもれびの会は川崎市の多摩緑地保全地区を手入れして、里山としての元々の姿に戻そうとしている。「よく森に手を入れずにそのまま残すことが『自然』だという人がいるみたいだが、それは間違いだと思っています」と、メンバーのお一人は説明してくださった。薪や炭を使っていた時代では木を切ることにより里山としての姿が保たれていた。しかし、経済成長が進むにつれ、石油やガスなどを使うようになるとそれらが必要なくなり、今ではほとんどの里山が放置され、暗い所でも育つ陰樹や竹林が生い茂っている。こもれびの会の考える里山における自然とは、多種多様な動植物が存在し、木漏れ日が差し込むような環境である。人の手を加えることで、そのような里山の姿に戻そうと考えている。
この日新しい柵を作り始めました

こもれびの会の活動内容

 今回活動に参加した時は、遊歩道に木漏れ日が差し込み、夏でもあまり暑さを感じずに歩くことができた。歩道にはこもれびの会のお手製の立派な柵があり、これまた手づくりのとても座り心地のいいベンチやテーブルなどもある。ここまでするのには実に10年の歳月がかかったという。
 こもれびの会の活動内容は主に「森づくり」、「竹林づくり」である。多摩緑地保全地区をA~Eの区域に分けていて、森とするところは竹をほぼ全部切り倒す、竹林とするところは木を切り倒すというように決め、リーダーである加藤敬治さんの指示のもと、メリハリをつけて作業をしている。そしてこもれびの会の大きな特徴が、切り倒した木や竹、刈った草でさえ有効活用していることである。それを使用して遊歩道に沿って柵を作り、机やベンチ、階段などに使用している。多摩緑地保全地区にあるそのようなものはほとんど手づくりである。
柵になる竹を打ち込みます

こもれびの会のモットーそれは…

 「市から働きかけてもらうのではなく、自分たちが市などへ働きかけて、活動をどんどん進めていった」と加藤さんはおっしゃった。多摩緑地保全地区は川崎市が所有している土地であるが、市からこもれびの会への支援はほとんどない。自分たちで道具を買うお金を集め、物置小屋も作った。そして竹や木などを切り倒して、それらを使って自分たちで遊歩道の柵などを作った。援助がないからこそ、自分たちで活動の内容をいろいろ考えることが重要になってくる。つまり、自分たちのやりたいことを実現しやすいということである。「自分たちでほとんどすべてやってきている。こんな会は他にはないと思う。」という加藤さんの言葉に全員がうなづかれていた。会員のみなさんの、加藤さんへの信頼と、自分たちの活動に対する誇り、自信が伝わってきた。
 こもれびの会で活動しているみなさんは、日曜日の朝のひと時を楽しみながら作業をされていて、活動の最中も昼食の間も、ずっとキラキラ輝いた笑顔で、まるで少年のように活動について話してくださった。こもれびの会の活動歴は9年。メンバーの多くは「たまたま近所に住んでいて、そばを通りかかったら森の中から声がしたので、のぞいてみて活動に参加することになった」という。みなさんのリラックスして活動を楽しむことを大切にする雰囲気こそが、ちょっとしたきっかけで活動に参加できたり、ずっと続けていくことのできる秘訣なのではないかと感じた。
 2年後、5年後、10年後、この多摩緑地自然保護地区がどのように変わっているかがとても楽しみに思った。
活動に参加して-執筆担当:田口 瑠奈(立教大学 理学部生命理学科) ボランティアとは…里山とは…自然とは…どうあるべきなのだろう。こもれびの会の活動に参加して、会員のみなさんのお話を伺ってとても考えさせられた。みなさんひとりひとりがしっかりとした自分の考えを持っていて、自分たちの行っていることに本当に誇りを持たれていると感じた。そして何よりほぼすべてのことを自分たちで考えて自分たちの手で行っているからこそ、自分たちの活動に充実感を感じているように感じた。ボランティアというのは自分たちが楽しまなければ続かない。みなさんがそうおっしゃっていて、活動内容のさまざまなところに楽しみを感じているようである。希少な植物や今まで見られなかった動物を見られるようになるなど、実際に活動の結果、動植物の多様性も出てきている。
 将来は多摩緑地保全地区に、会員のみなさんはもちろん、子どもたちの笑い声や動物の鳴き声が響き渡っていることだろう。