企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人 みどりと花の大地学園

歴史感じる土地・福島県南相馬市

 古い歴史の香り立つ場所は、心の琴線をくすぐられる最たる場所のひとつに違いない。地域の緑化活動においても、参加者や周りの人が地元の自然をより好きになったり、お互いの絆を結びつけたりするのは、その土地の歴史の深さにあるのではないか。今回、「特定非営利活動法人みどりと花の大地学園(以下、大地学園)」の活動拠点の一つ、福島県南相馬市の原町区を訪れた。

活動の原点は、相馬地方の歴史を大切にする想いから

 「野馬追(のまおい)」という千年余も続く伝統行事で有名なこの地区の歴史を紐解いてくださったのは、現理事長の岡征四郎さんと、団体創立者の濱須篤義さんのお二人。今から約600年前、相馬家の始祖「平小次郎将門(たいらのこじろうまさかど)」は相馬倉麻で官職を務めていた。あるとき彼は、軍事力を高めるために野馬を敵兵に見立てて捕らえる訓練を始めた。これが、野馬追いの由来だそうだ。代々の相馬藩主が続けたこの訓練は、いつしか地域の伝統の行事となり、現在も毎年開催されている。濱須さんも、昨年郷大将役として参加したそうだ。
 「近くの山をただ歩くのではなく、どんな場所なのかを知って地元をもっと好きになってほしい」と語る濱須さん。もともと県庁で林業関係の仕事をしていたため、地域の自然についての詳しかったが、「あなたの山や花の知識を周りの人ともっと共有したらどう」という何気ない奥さんの言葉をきっかけに、活動が始まった。1994年に「みどりの学校」という学びの場をつくり、2年間のカリキュラムとした。今までに述べ約300人が学んでいる。座学もおこなうが、もちろん実習も充実している。専門家とともに植物園に見学に行くこともあれば、花苗の床替えや、植林、下草狩りなど樹木の種類や花づくりも学習する。さらに1999年にNPO法人大地学園を創設。学んだ知識をもっと地域に広げてほしいという想いで設立し、みどりの学校の卒業生が入学できる。大地学園のメンバーは現在約41名。みどりの学校(20名)の運営も行いながら、定期的に活動している。
学園のみなさんで手入れをした、岡さん自慢の山

地域への誇りが自然を大切にする

 まず活動として最初に行ったのが、川沿いの道(奥州相馬行方街道)に千本の桜を植える活動だった。初代相馬藩主が、千葉県から南相馬市に領地をもらって下向した道があり、それを敬して、下向ルートに千本の桜の樹を植える活動をしているのだという。しかし、雑木林の中にあり一見すると普通の道なので、地元の人はあまり気づかない。そこで大地学園では、たくさんの人に千本桜の由来を伝えて、この土地に誇りを持ってもらいたいと思っている。南相馬市には、このような歴史の名所がたくさんある。どんな場所かを知ることで、その土地をより愛し、子どもたちのために美しく残そうという思いになるという。
 その他にも大地学園は、活動できる市内の場所を、行政と交渉して探している。12箇所の植林箇所を定期的に回って手入れをしているそうだが、「街を緑でいっぱいにしたい」という想いは留まることがない。そこで最近では、駅前や街路を花でいっぱいにする活動も始まっている。

花を育てて南相馬市を彩る

 ちょうど取材に行ったときは、みどりの学校の学生と大地学園のみなさんで、来年の春に原町区の沿道を賑わすパンジーの床替えをした。約一万本の苗を、大きなケースの中から一つ一つピンセットで取り出し、栄養たっぷりの土が入ったビニールの鉢に移し替える。2cm程の苗の根や葉はとてもか弱い。小さな鉢に入れた後も、春までの約半年間、朝、夕と当番で水やりを行う。床がえの作業は、4時間ほどで手際よく進められるていた。活動後、全員でおにぎりを食べているときも、活動中もとても和気あいあいとした雰囲気だ。地元の人たちのふれあいの場ともなっているのだ。そして、濱須さんに「校長先生、先日の草なんですけどね」と気軽に声を掛ける生徒の方々を見て、団体の仲の良さや熱心さが伝わってきた。
おしゃべりを楽しみながらの床替え活動

受け継がれる想い

 南相馬市全体に12カ所の活動場所のうち、5カ所を一緒に見学した中で、「原町区からもっと広い範囲を、みどりと花でいっぱいにしたい」と、二代目理事長の岡さんは語ってくれた。その想いが大地学園の皆さんから地域の人に広がり、南相馬市全体がみどりと花でいっぱいになる様子が想像できた。
活動に参加して-執筆担当:成川 幸(早稲田大学 政治経済学部経済学科) 一番印象的だったのは、どの生徒さんに伺っても南相馬市の歴史を語ってくれたことだ。それだけ地元への愛が深いのだなと肌で感じ、初めて訪問した私まで温かい気持ちになった。山での活動は特にそうだ。連れて行ってくれた山の一つ、「五台山」は、市の中心部から車で少し行った所にひっそり立っていた。しかし、中に入れば崖や谷がたくさんあり、色んな植物が賑やかに生息していた。とても変化に富んでいるこの山も、十一代藩主相馬重胤の隠遁所として有名なのだそうだ。南相馬市は、少し移動すればまるでタイムスリップした感覚になれる、素敵な地域だった。他にも、市の歴史博物館を案内してくださり、親切にしていただいた。お二人と別れてから、駅近くのお寿司屋さんへ夕食に行き、大地学園に取材に行ったことを話した。するとそこの大将が「ああ、あの道路沿いの花はその団体が植えていたんだね」と、ずっと気になっていたと話してくれた。大地学園の活動がここでひとつ、広がって嬉しかった。最後になりましたが、岡さん、濱須さん、本当にありがとうございました!