企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人 すいた環境学習協会 すいた里山クラブ

 一歩踏み込むと隅々まで陽ざしの行き届いた竹林に胸がはずむ。見上げれば丁度、葉が入れ替わりまだ黄緑色の初々しい竹の葉を一面に見ることができる。目線を落とすとドングリや松ボックリ、山栗を至る所で見つけることができる。ここは、大阪府吹田市が指定した緑地帯「千里第2緑地」だ。吹田市といえば大阪万博の開催されたところ。新大阪駅や空港へのアクセスがよく、市内に13もの駅をもつベッドタウンである。人口が密集した南部とは対照的に、緑比率が40%を超える千里ニュータウンに活動地はある。「すいた里山クラブ」は雑木林や赤松林にまで浸食していた竹を完全に伐採し、千里第2緑地20,000㎡を竹林・雑木林・赤松林の3つの領域に分類し保全している。「すいた環境学習協会」は、市が開校した「すいたシニア環境大学」の卒業生有志が立ち上げた団体だ。すいた里山クラブを含めすいた環境学習協会には現在8つのグループがあり、グループ間でも連携をとりながら活動している。今回は、その中でも中心的な活動を行っている「すいた里山クラブ」にお邪魔した。

手作りいっぱい カブトムシいっぱい

 すいた里山クラブは定例活動として月3回、里山の整備保全を行っている。活動日にはすいたシニア環境大学の出身者だけでなく地域住民も集まり、多い時では20数名での活動になる。番傘をさしたまま歩けるくらいの間隔が丁度よいとされる竹林を、健全な状態に保つためには継続的に竹を切る作業が必要だそうだ。切った竹の一部は散策路の柵を作るために利用したり、他のグループに提供し、そこではクラフトやみどりのカーテンの材料として活用されている。休憩場にある手作りの机の上には、メンバーの方が竹で作ったトンボやウサギ・籠などが置かれていておもちゃ屋さんみたいだった。
 また、昨年からは活動地の落ち葉を集め腐葉土にする取り組みも始めた。「副産物として腐葉土の中からカブトムシの幼虫がたくさん取れるようになったんだ。孫のために持って帰っていくメンバーもいるよ。」とリーダーの前川光宏さんは教えてくれた。里山の中は工夫でいっぱいだ。
木漏れ日が美しい竹林

里山と人 人と人をつなぐところ

 そのほかにも、地域住民・小中学生に対して環境問題の入り口にと自然観察会や体験学習会も行っている。前川さんは「今一緒に活動するようにならなくても、観察会や学習会を通して環境問題に理解をして興味を示してもらえれば、今後なんらかの行動に結びついていくのではないかという期待がある。」とおっしゃる。また、この里山は作業するメンバーの居場所にもなっている。ここに集まるメンバーは、趣味だけでは物足りず社会貢献活動をしたいと思っている人、社会に夢を持っている人、山や自然がすきな人、物づくりに拘りがある人、まさに十人十色の人たちで構成されている。「ボランティア団体には、いろいろな技術や経験をもった人が集まってくるところが非常にいい。何かあっても誰かしら解決策を知っている。」とメンバーの一人、片山義明さんは話す。1つのカラーに染まることなく、たくさんのカラーが混じり合ってすいたの里山は色づいているのだと感じた。
手作りの休憩所、活動前の体操

にぎやかな里山に

 そんな里山での活動を始めて5年。今まで竹に空を埋め尽くされ葉をつけることを阻まれていた樹木に葉がつくようになったそうだ。生息する鳥の種類も増え、新たな樹木が生息するようになった。「活動を始める前は、薄暗くて不気味な竹林だった。怖くて真っ暗だったから入れなかった。」とメンバーの小川昇正さんがおっしゃる千里第2緑地は、今は犬の散歩に、朝のランニング、ドングリ拾いと散策者が訪れ喜んでもらえる里山になった。「地域の人たちにこよなく愛してくれている方がたくさんいる。散策者が増えている。」と前川さんも目じりが下がる。そんなすいた里山クラブの将来像について前川さんは「吹田市には里山公園がない。最終的にはもっと人が集えてみんなの日常の隣にあるような、そんな里山公園化を目指したいね。」と教えてくれた。これからももっともっと賑やかな里山になっていきそうだ。
活動に参加して-執筆担当:阿部紘士(神奈川大学経営学部国際経営学科) ヘルメットをかぶりノコギリを腰に巻きつけ準備完了。竹林へと飛び出す。竹林に入り、ノコギリで地面と水平に竹を切る。足下には、そこら中に切断された竹の跡がある。竹を倒すときは、支える人や引っ張る人、みんなで一緒になって作業が進む。薪や炭の供給など生活と密接に関わってきた里山は、現在多くが役目を失い放置された状態にある。人が集える場所として、自然と触れ合える身近な場所として、里山の公園化は時代に適応した新たな里山の形なのかも知れない。すいた里山クラブを取材して、千里第2緑地を訪れ、たくさんの人が関わって里山というものがあるのだと感じた。活動している人も散策者も行政の人も皆が皆同じ思いや考えをもって里山に接しているのではない。みなそれぞれの思いをもって里山と接していた。みんなそれぞれ活動することへの考えも思いも今まで積み重ねてきた経験も違う。そんな人たちが、互いを認め合いながら協力して育んでいる里山だった。ここには、動植物もいる。人もいる。それからみんなの思いがある。そんな里山、みんなの森だった。