企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人 かなざわ森沢山の会

 横浜駅から電車に揺られること30分、銀色に光る高層ビル群が姿を消し、海の青と山の緑が鮮やかに目に映る横浜市金沢区。その中でも海が遠くまで見渡せる高台に動物園と隣接した金沢自然公園がある。休日には多くの親子連れなどで賑わい、区民の憩いの場となっている。ここが、特定非営利活動法人かなざわ森沢山もりたくさんの会(以下、森沢山の会)の活動拠点だ。

子どもと昆虫が触れ合える森を目指して

 1996年6月、横浜市立大学で「今、市民にとっての横浜の緑と農を考える」という市民講座が開かれた。森沢山の会は、その講座の受講生を中心に「学んだことを行動に移し、金沢区にも活動団体を」という思いのもと始まった。しかし設立当初は活動場所に悩み、会員の伝で金沢自然公園(以下、自然公園)の管理事務所にコンタクトをとり、何かできることはないかと相談していた。
 同じころ、金沢区にある富岡小学校の生徒が、空き缶を集めてつくったお金で木を植えたいと市長へ手紙を出した。市は「この願いを大勢の市民と共に叶えたい」と思い、自然公園の管理事務所に活動場所の相談をしていた森沢山の会に依頼をし、新たに自然公園内での森づくりが始められることとなった。
 会員の方々は当時のことを思い出し「自分の背丈よりも伸びたアズマネザサやススキが生え放題になっていて、草刈り前の調査で入った時にはイノシシが足を掠めて走り去ったこともある」と話してくれた。
 1年半の時間をかけ間伐や草刈りをし、小学生と共にコナラやクヌギの植樹をしたその場所は、『どんぐりと昆虫の森』と名づけられ、木々の間から降り注ぐ温かな木漏れ日が、遊歩道を駆け回る子どもや森全体を包んでいる。
森と海が調和する金沢区を高台から臨んだ光景、森沢山の会の名称そのもの。

未来の子どもに金沢の自然を

 森沢山の会は「豊かな自然環境を守り次世代に残すこと」を目標に活動を始めた。それを象徴しているのが会の名称だ。金沢区には、森も沢も山も野も海もある。これら全てを大切にしたいという地域愛から生まれたのがこの名称であり、「もり・さわ・やま・の・かい」という読み方を「もりたくさんのかい」と読み替えて、「森沢山の会」とした。
 現在では、会員45名が月に2回、下草刈りや間伐などを中心に行っている。活動場所は急斜面が多く、木を切り倒すには相当な体力を要するが、余分な草木を整理することで、森が荒れなくなり、明るくなる。また、活動で出た間伐材は炭焼きや木工細工に使い、バザーの時には手作りの竹炭や花瓶、椎茸を出品し、豊かな自然環境を守りながら、地域の人々との繋がりを深めている。
 『どんぐりと昆虫の森』をつくっていたころの「子どもたちに森と触れ合う楽しさを知ってほしい」という想いは今でも受け継がれている。年に3回行われる金沢動物園のイベントや小学校での出前授業では、間伐材を使ったコースター作りや竹ぽっくり体験を行い、子どもたちに大好評だ。
子どもが触れ合える森を残すため、仲間と共に整備へいざ出発!

森づくりから仲間づくりへ

 森沢山の会を通して得られるのは森づくりの楽しさだけではない。会長の新岡良治さんは、森沢山の会を「新たな居場所」だと言う。定年退職を迎え、日々の生活に物足りなさを感じていたが、会員や子どもたちとの交流を通じて、地域に貢献している実感や関わりの薄かった地域住民との心の繋がりを得られたそうだ。会員同士での飲み会やバーベキューも多く「仕事仲間とは違って柵がなく、腹を割り本音で話ができる仲間ができた」と会員の方々は口を揃える。地域のために、ありのままの姿で一緒に汗を流すことで生まれる新たな繋がり。これも森沢山の会の魅力の一つとなっている。
 最後に会員の方に森づくりとは何か、漢字一字で表してもらった。「快」そう答えるのは丸屋充さん。「汗をかくことに快さを感じ、会の居心地も最高」と眩しい笑顔を見せる。飯島和美さんは「終わった後の爽やかさがたまらないから『爽』かな」と目を輝かせる。新しい居場所を見つけ、楽しみながら子どもたちのために活動を続ける森沢山の会。彼らはまさに、ここで第二の人生を満喫し楽しんでいるのだ。
活動に参加して-執筆担当:劒持あゆみ(上智大学経済学部経営学科) 活動を通して痛感したのは、森の作業の厳しさだった。会員の方々は軽快な足取りでも、私は後を追うだけで精一杯。丁寧に教えていただいても、実際に挑戦するとそう簡単にはいかない。軽い気持ちでは太刀打ちできない、木の切り倒し方などの技術、危険な森の動植物に関する知識、急斜面で長時間活動するための体力。これらを自らの努力で身につけた会員の方々の思い入れに、ただただ感心させられた。
 作業後、脚や手が震えていたが、そんな疲れを一気に吹き飛ばしてくれたのが、目に映る色とりどりの葉だった。鮮やかな色合いが心を癒し、ゆっくりとした秋への移ろいを感じさせてくれた。森は自然の厳しさと共に、四季折々の美しさをも教えてくれたのである。
 時間に追われた生活や街の喧騒から離れ、何か隠れていそうな森に心を弾ませる。そんな声に共感していると、どこからともなく「あなたの戻ってくる場所はここにあるよ」そんな風に聞こえた気がした。そう、森は私たちを呼んでいるのだ。
写真左、学生レポーターの劒持