企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

結城里山の会

 結城紬で有名な茨城県結城市。結城駅から車で約10分、のどかな田園風景が広がる一角に「結城市健康の森」はある。そこには、多くの虫や野鳥が棲み、温かな陽光がさしこむ3.4haの森が広がっている。この森で活動されている「結城里山の会(以下、里山の会)」代表の海老澤功さんと、事務局長の秋山まゆみさん、岩月正勝さん、滝澤恒夫さんにお話を伺った。

危機感から行動へ

 活動のきっかけは、2004年の結城ロータリークラブ創立40周年記念事業だった。「幼い頃駆け回っていた森が手入れされずに荒れた状態がずっと続いている、このままではダメになってしまう」と危機感を感じていたこともあり、結城市から0.7haの土地を借りて里山整備を開始した。「40年も手入れされず、うっそうとした森だった」と滝澤さん。そのような中、伐採、下草刈りから散策路整備まで、ゼロから全て自分たちで行った。その後、さらにその周辺の個人所有の土地も借りて整備を進め、「結城市健康の森」となった今も活動を続けている。ロータリークラブの事業として始まった活動だが、「市民にも広く活動を知ってもらい、参加してもらいたい」と、2009年に「結城里山の会」を設立した。
暖かな陽がさしこむ「結城市健康の森」

子どもたちに伝えたい里山の楽しさ

 「自分たちが子どものときは、里山を駆け回って遊んでいた。そのような自然の中で遊ぶ楽しさや、森の中だからこそできる体験を今の子どもたちにも伝えたい」と海老澤さん。里山の会では子どもたちを対象にした活動を数多く行っている。
 最も力を入れているのは、7~3月にかけて月1回開催している“里山発見レンジャー”だ。自然観察や野鳥観察に加え、最大の魅力は、飯盒炊飯や火おこし体験ができることだ。米をとぐ準備から片付けまで全ての行程を子どもたちが担うという。始めはなかなか自分から動かなかった子どもたちが、回を重ねるごとに主体的に動くよう、頼もしく変化していく姿を目にすることができるという。例えば、昨年から参加している子は、今年から参加した子に「ここはこういう風にするんだよ」とやり方を教えてあげるという。
 全9回ある里山発見レンジャーの内容は、毎回工夫されており、秋山さんをはじめ4人のメンバーが中心となって考える。次はピザ窯を作ろうか、冬には子どもたちと森の中に大きなクリスマスツリーを作ろうかと、「子どもたちと何をするか考えると次々にアイディアがうかぶ」と秋山さん。
 他に、里山の会では、近くの小学校の自然環境教育の支援も行っている。小学生が、自らが育てたクヌギの苗の植樹などを行う。岩月さんは、「森そのものをみせるのが一番。実際に里山の自然の中に来てもらい、自由に遊んでもらう。そのときこそ子ども本来の姿が見える」と目を輝かせながら話してくださった。学校の授業とは違う、”山のおじさん”の話は子どもたちを惹きつける。「そこ掘ってみて。何かあるぞ」と言うと、生き生きとした表情になるという。子どもたちにとって里山の自然は未知の世界で、その全てが新鮮なのだ。そして子どもたちは、里山に来ると「おじさん!」と駆けてくるそうだ。こうした子どもたちの姿を見るのも、里山の会の皆さんの活動を続ける原動力になっているのだ。
森の中で、のびのびと遊ぶ子どもたち

興味から始まる第一歩

 毎年11月23日に「結城市健康の森」で開催される“健康の森フェスティバル”は大人たちにも里山で過ごす時間の素晴らしさを知ってもらう大切な機会であり、里山の会が1年のうちで一番力を入れるイベントだ。そして、「人間の生活のために必要な場所」としての一般的なイメージの里山でなく、里山の会が考える「楽しむための場所」としての里山の特徴がよく表れているイベントでもある。
 フェスティバルには、結城市内を中心に毎年約600人が訪れ、森遊びのゲームやクラフトから焼き芋や焼きそばの販売まである、まさに里山でのお祭りだ。昔里山で遊んだ経験のある大人は、「昔はこんな遊びしたな。山の空気ってこうだったな」と幼い頃を思い出すきっかけにもなる。「里山は定期的に手入れしないと荒れてしまう。興味を持って、活動を引き継でもらいたい」と海老澤さん。「興味がないと活動には参加してくれない。だからまずは大人にも里山への関心を持ってもらうことが大事」と岩月さん。世代を超え多くの人に里山での楽しい経験を知ってもらいたい、そして楽しい時間を提供してくれる里山をこれからも守っていってほしい。里山の会の皆さんの思いは熱い。
活動に参加して-執筆担当:麻生茉那(東京大学教養学部文科一類) 今回、里山発見レンジャーに参加させていただいた。竹でお皿や水鉄砲を作ったり、クラフト工作をしたり、里山の会お手製の木のブランコで遊んだり…。普段は体験できないような森での遊びを存分に楽しむことができた一日だった。その日は、子どもたち同士も年齢の幅が広く、初対面が多かったのだが、皆一緒になって森の中を楽しそうに駆け回っていた。こういう光景こそ海老澤さんたちが伝えたかった経験ではないかと感じた。また、参加していた子どもたちだけでなく、保護者の方たちも、「懐かしいー」とブランコに揺られたりして、楽しんでいる様子が印象的だった。「里山で遊ぶ楽しさを伝えたい」。里山の会のみなさんのその思いは子どもたちだけでなく、大人たちにも十分に伝わっていると実感することができた。子どもも大人も夢中にさせる里山での1日をプレゼントしてくれた、里山の会のみなさんの温かさが身にしみた。
写真右、学生レポーターの麻生