企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

光風台 花と緑の会

 千葉県の中央部に位置し、工業地帯と田園風景が両立する市原市。光風台団地は、市原市内を流れる養老川の中流域の西側に位置する閑静な住宅街だ。1977年に、東京などの大都市圏で働く人達のベッドタウンとして造成された新しい街である。この街で、植樹などの緑地整備のボランティアを行っているのが「光風台 花と緑の会」(以下、花と緑の会)だ。 今回、花と緑の会の活動について代表の河内昌蔵さんらにお話を伺った。

荒れ放題の森から

 花と緑の会が整備しているのは「光風台ガーデン」というのべ2万㎡の緑地で、住宅街の西側から、北側、東側にかけてを取り囲むように連なるA、B、C地区と呼ばれるエリアと、住宅街の中にある花壇からなる。A、B地区は、住宅街から急斜面の坂の下に遊歩道があり、斜面に植えられた桜を見ながら散策できる。C地区はアジサイなどの花々が植えられている。また、花壇には季節の花々が植えられ、地域の人たちの憩いの場となっているが、これらの場所は住宅街が造られたときに整備されたのではない。「実は以前は、ここ一帯がこのような雑木林だったんですよ」と河内さんが指さしたのは、光風台ガーデンのエりアの外にある雑木林で、現在の姿からはとても想像できないほど、うっそうと茂った森だった。
 光風台ガーデンがここまで整備されるのには、かなりの時間と労力を要したそうだ。光風台は、山の一部に造成されたため、住宅街と隣合って未整備の雑木林が広がっていた。次第にこの雑木林はゴミの不法投棄や違法駐車、さらに空き巣の隠れ場所になるなど、防犯の面からも好ましくない状況になった。
 2001年、光風台団地の町会設立の記念事業として、当時 町内会長だった河内さんが立ち上がり、雑木林を整備して桜並木を中心とした緑化活動をはじめた。しかし、荒れた雑木林は木の根が深く張り、予算もほとんどない中で機材を使うこともできず、作業が進まなかった。難しい状況の中、次第に町内会員のモチベーションは下がっていったという。そこで町内会の事業と切り離し、有志が集まったボランティア団体として花と緑の会が発足した。メンバーがそれぞれ知恵を出し合い、基本的な整備に3年を要したという。
 現在、花と緑の会が行っている主な作業は、下草刈り、木の手入れ等である。その他、草木への肥料やりや消毒、台風前には桜の木の枝を縛ったり、土嚢を積んだりなどの臨時の作業が入ることがある。
A地区の遊歩道と桜並木

10年以上活動が続く秘訣

 河内さんが話す、活動をしていく中で「花と緑の会」が大切にしていることは、「メンバーが出来ることを無理のない範囲で行うということ」だ。例えば、力が必要な下草刈りや桜の枝の剪定などは男性が行い、公園の花壇の手入れは庭づくりが好きな女性が行っている。
 しかし難しい作業もある。特に毎年4月から11月の間に毎月2万㎡の下草刈りを三日間連続で行っているが、作業は体力的に厳しく忍耐のいる作業だという。そのような時でも活動を続ける原動力について尋ねると、「他人事ではなく、自分達の街の事は、自分達がやらなきゃという責任感でやっている」と副代表の阿部さんは語った。また、作業の終わった風景を見て達成感を味わったり、「綺麗になりましたね」と声をかけられたりすることも、活動をするモチベーションになるという。こうしたメンバーの尽力により、10年以上という息の長い活動が続いている。
季節の花々が植えられる光風台ガーデン

地域交流の懸け橋に

 「花と緑の会」の活動は、活動を通して地域の繋がりを深めていく役割も担っている。 例えば、地元の小学校と連携して年3回行なわれる、地元の小学5年生の総合学習である。この授業では、花と緑の会が管理している公園の花壇で、5年生の生徒と一緒にコスモス、サルビア、菜の花などの季節の花々を植えたり、雑草を採ったりする。この授業が始まったきっかけは、花と緑の会が花壇の手入れをしているときに、通りがかった小学生が「僕たちもやってみたいなー」と声をかけてきたことだという。河内さんは「地域の活動に参加することで、自分の地域を知ったり、地域に愛着を持つきっかけになってほしい」との思いから、学校側に働きかけ、この授業が生まれた。授業は子供たちにも好評で、団地族で新しく引っ越してきた人が多い光風台という地で、自分の住む地域に興味を持つきっかけになっているという。
 またA、B地区に植えられた桜は、現在樹齢14年ほどになり、2~3年前頃から見事な花をつけるようになった。毎年桜が咲くころに、花と緑の会主催のお花見を催している。お花見は、普段精力的に活動しているメンバーに加え、この活動でお世話になった行政や地元企業・団体等の方々の他、忙しいためあまり活動できなかったメンバーの人たちが集い、交流できる場になっている。

これからの光風台

 光風台の緑地整備は当初は有志から始まった作業だったが、2002年から市原市が光風台ガーデンの管理を花と緑の会に依頼している。ボランティアの力で荒れた森を整備した実績と、地域に根差した息の長い活動は評判を呼び、2013年に市原市の推薦を受け、国土交通大臣賞、農林水産大臣賞、そして2014年4月には内閣総理大臣賞を受賞した。
 河内さんは、今後の活動を考える中で、何よりも活動を継続していくことを大切にしている。例えば、桜の木をなにかの記念に植えても、その後の管理を行わなければ木は育たない。「やりっぱなしはだめです。活動は続かなければ意味がない。次の世代、またその次の世代と続けていくことで、光風台ガーデンという素晴らしい景勝地が創成される」と河内さんは力を込めて話す。
 地域に根ざした息の長い活動を通して、そこに住む人達の助け合いや連携を深めたいという思いと共に花と緑の会の活動は続いていく。
活動に参加して-執筆担当:荒川 千夏(麻布大学獣医学部) 活動に参加したのは、秋の訪れを感じる10月だった。小学5年生の体験授業で、次の季節の花を植えるのに備えて、A地区に咲いているコスモスを抜く作業を行った。道路沿いに約150mほど連なって植えられているコスモスは、人の背丈以上あり、根がしっかり張っていて抜けにくい。四苦八苦するレポーターを尻目に、河内さんと阿部さんは軽々と引き抜いて、手際よく束ねていき、1時間半ほどで作業は終了した。作業中は夢中で気が付かなかったが、中腰での作業は想像以上に筋肉を使った。しかし、振り返るときれいに片付いた道が見え、ここでしか味わえないすがすがしさや達成感を感じた。
 途中、住民の方々が「綺麗ですね」と声をかけ、河内さんが「どうぞ好きなだけ持って行ってください」というやり取りが何度もあった。“花と緑の会の活動によって交流が生まれている”ということを実感した一場面だった。
光風台ガーデンのベンチでの取材