企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人日本の竹ファンクラブ

 「やるからには『竹の専門店』になろう」。そう語る特定非営利活動法人日本の竹ファンクラブ(以下、竹ファンクラブ)の理事長、平石眞司さんからは強い意志を感じた。その言葉どおり、日本の竹ファンクラブは、竹林の管理を行う「竹の里親制度」や、竹を使ってモノづくりをする「竹灯籠まつり」、「竹の学校」など数多くのアプローチを通じて、竹について詳しく知らない人に竹の魅力を伝える活動をしている。当初は横浜地域の近所の仲間同士で始めた竹の保全活動は、現在会員数189名にも及ぶ大規模な活動になっている。

子どもたちの笑顔があふれる公園に

 平石さんが竹の保全活動を始めたのは、15年程前である。自宅の前にある公園が、鬱蒼と生い茂る竹に囲まれていて全く光が入らないため薄暗く、公園であるはずなのに誰も近寄れないような環境であった。これは、もともと竹の成長スピードの早さというのが著しく、他の木々を駆逐しながら竹だけが繁殖してしまうことが原因だ。危機感を抱いた平石さんが地域住民とともに竹の管理を始めたのが団体設立のきっかけである。付近の小学校では、「あの公園に近づかないように」と指導することもあったそうだ。「当時小学生だった娘に、遊ぶ場所をつくってあげたかった」と平石さんは語る。

便利さを見つめ直す

 平石さんは「竹には2つの優位性がある」と竹の魅力を説明する。1つめは、他の木々よりたくましく成長する点である。一般的な木々が何十年もかかって成長するのに対し、竹は大人になるまでたったの1年しかかからない。切ってもまた生えてくる竹はきちんと管理すれば、言わば「永遠に使える資源」として使うことができる。1960年代の高度経済成長の時代に普及したプラスチックは私たちの生活から欠かせないものになったが、その裏で、生活の中で重要な役割を担ってきた竹から人々の関心が薄れていくことになった。「人間の都合で増やした竹を、また人間の都合で放棄してはいけない」と、平石さんは現代の「竹離れ」を危惧している。
 2つめは、竹は資源として機能的であるところだ。竹は中が空洞であるから、軽くてしなやかで扱いやすい。そのような特徴をもっているからこそ、竹ファンクラブでは男女問わず、また小さな子どもも竹を切ったり加工したりという体験ができる。小さな子どもに活動参加させるときに何か工夫することはあるかと聞くと、「ちゃんと刃物を使わせること」だという。今は、子ども自身よりも親が心配して刃物を持たないことが多い。しかし機会を与えてあげないと結局いつまでも使えないままになってしまうので、活動のときはあえて刃物を使う体験をさせてあげるのだという。早いうちから経験させると呑み込みが早く、最初のうちは戸惑っていても子どもは案外できてしまうものだという。子どもの「自発性」を育てることもこの団体の方針の一つである。
 このように、竹には資源として他の木よりも扱いやすいことや、また竹を切る楽しみ、切った竹を有効活用する楽しみなど、多くの可能性を秘めている。竹ファンクラブは、竹の利便性を今一度多くの人に知ってもらおうと努力を続けている。
活動場所の1つ、横浜国際プール林浴の庭

「竹」を伝えるメッセージ

 活動場所の一つである横浜国際プールの林浴の庭には、毎年10月に行う「竹灯籠まつり」で飾られる3000本もの竹灯籠を一目見ようと、地域住民や県内外からのお客さんとメディアなどたくさんの人で賑わう。当日は、竹ファンクラブの活動参加者が思い思いに作ったデザインの竹灯籠が竹林の中に幾重にも広がり、昼の顔とは全く違う幻想的な景色を創り出すそうだ。毎年お祭りを開催することで、竹林の美しさや竹細工で生み出す風景を知ってもらい、竹林の保護、保全意識の醸成にもつながる。一年かけて準備を整えたお祭りを迎えたときは、その感動もひとしおで、多くの人の心を突き動かしてきた。例えば以前、取材にきた読売新聞の記者が「こんなもの今までにみたことがない」とこのお祭りの素晴らしさに心打たれ、もともと地方紙で掲載予定だった記事を、カラーの写真付きで全国版へ拡大させたということがあった。他にも、この竹灯籠まつりに客として参加したのをきっかけに団体に参加、現在主要メンバーとして活躍する方もいる。このように、竹ファンクラブとして最大のイベントである「竹灯籠まつり」は、見る人を魅了し、さらに団体が竹林を保全する活動を続ける原動力になっている。そして開催されたお祭りには毎年多くの人が訪れ、地域の活性化にもつながる。竹が本来持っている役割や魅力をしっかりと伝えるべく、竹ファンクラブの活動は続けられていく。
灯篭づくりの準備作業
活動に参加して-執筆担当:守井 芙美子(成蹊大学経済学部) 横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅から歩いて約5分のところに団体の活動場所「横浜国際プール」の林浴の庭はあった。2週間後に「竹灯籠まつり」を控える9月某日、もうすでにたくさんの竹灯籠が出来上がっていた。その日は切り出した数百個の竹を運んだり成形したりという作業をしたが、経験豊富なメンバーを中心に作業はどんどん進んでいく。ヘルメットやのこぎりなどといった必要な道具は全て揃っており、初めての人でも気軽に活動参加できるだろうと感じた。毎回20名強の会員が参加しており、とても和気あいあいとしている。昼休みには余った竹であっという間に花びんを作ってしまう会員の方がいて、普段からこの団体の活気の良いことがうかがえた。特に印象に残ったのは、参加者の皆さんそれぞれの頼もしさである。竹林に入ることすら初めての経験だった私たちに道具の使い方から竹の運び方まで一から教えてくれ、私が竹の伐採に苦戦していると、「ちょっと見てて。のこぎりは竹と垂直に入れるんだよ」とお手本を見せてくれた。参加者の方、一人一人に、活動と団体に対する熱意を感じ、竹の「専門店」を目指して名づけられた「日本の竹ファンクラブ」の精神がしっかりと根付いていると思った。