企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
新宿から電車で、わずか15分のJR三鷹駅。そこからバスに揺られること20分ほどの場所に位置する、神代植物公園。この都立公園の広大な面積にはみどりがあふれ、周辺にも深大寺など、歴史の趣を感じさせる環境が整っている。ここで活動する団体のひとつに、「22世紀の森づくり・神代」がある。代表の孤嶋章一郎さんにお話を伺った。
100年計画の始動
- 団体設立は2000年4月15日。東京都は1996年に策定した「生活都市東京構想」に基づき「22世紀の都市の森づくり」というテーマを掲げ、基礎調査を行うとともに、神代植物公園周辺の土地買収を進めていた。ところが、民有地をとびとびに残しながら、土地買収計画が頓挫してしまい、既に買収済みだった土地の荒廃が進行してしまった。そのまま放っておく訳にもいかず、都は土地の管理事業に協力してくれる都民を募集した。そうして集まった約70人が初期メンバーとなり、団体の原型ができあがった。
なんとしても立派な森にしてやろう!・・・とはいえ、集まった人は森づくりに関しては素人ばかり。そこで、まずは勉強と森づくりのモデルとして見学に行ったのが、明治神宮の森であった。明治神宮の森は、自然の森を目指し、大正4年に100年計画でつくられた、人工の森である。孤嶋さんはこう振り返る。「(つくりはじめて)80年後の森を、僕らが見に行ったんですよね。80年経つとこのくらいになるんだ、と。やっぱり100年みないと森はできないなっていうんで、じゃあもう『22世紀』って名前にしようと。100年かけて森をつくろうという事にしたんですよ」。こうして「22世紀の森づくり・神代」は活動を開始した。 - 活動地を案内くださる孤島さん(左)
地域に根ざした森づくり
- 都の掲げた森づくりコンセプト~都民と企業と都の協働~のもとでの、活動1年目。予算無しでのスタートではあったが、都からは1ヘクタールの土地と作業用具、苗木等の提供を受けた他、調布の造園屋さんが、森づくりにあたっての技術指導を引き受けてくれるなど、地元住民や企業の協力を得ながら「武蔵野らしい森」を目指して、植樹活動を進めていった。
2年目からは、緑化活動を応援する助成金を、予算の中心にしていった。「花王・みんなの森づくり活動助成」も、そのひとつだった。4年目からは、さらに1000平方メートルの土地の管理を都から任され、畑づくりにも着手。また、地域の人々との交流のために、「植樹祭」を初年度から、「収穫祭」を2004年度から、それぞれ実施。森づくりの楽しさを地域で共有する場も意識的につくってきた。
今年で発足から7年目。これまでに、周辺の景観との調和を考えながら、実に79種・660本もの植樹を行っており、森の基礎は作った。さらに、植樹祭には100人を超える人数が参加するほどとなり、近隣住民の認知も得られるようになってきた。「22世紀の森づくり・神代」自身が今後の100年を支える根を、武蔵野の地に張ったといえる。 - 4年目から手がけている畑
22世紀へ向けて
- 今後は、これまでにつくった基礎を絶やさないための、地道な手入れが続くだろうとのこと。一見すると大変そうだが、彼らはそんな中に楽しみを見いだしている。自然は絶えず表情を変え続け、とどまることがない。ある日、ふと珍しい植物が芽を出していたり、逆に昨日まであった花が、今日には枯れてしまっていたり・・・。現在のフィールドは、低木が生い茂るなかに散歩道が敷かれており、お洒落な公園といった印象をうける。そんな景色も、数十年後には木々が生長し、木洩れ日まぶしい、鬱蒼とした森になることだろう。そのためにも、まずは今できること、すべき作業をする。団体としても、一時としてとどまることなく、進化し続ける、それが「22世紀の森づくり・神代」の森づくりスタイルだ。
森づくりは世代を超えて受け継いでいかねばならない、歴史的作業である。そのため、今後は後継者育成にも力を注いでいくという。それら、人と森が互いに育ち・育てられるノウハウを受け継ぎながら、「22世紀の森づくり・神代」は、武蔵野の地で、明治神宮の森に勝るとも劣らない森を育て続けることだろう。 - 植樹祭の様子