企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
多摩グリーンボランティア森木会
かつて里山が広がっていた東京都多摩市。
大規模なニュータウン開発によってその里山は団地となった。残されたのは公園のなかにある雑木林のみ。「もはやこの雑木林を里山とは呼べない」と言いながらも、「だからこそ残さなければいけない」と考える多摩グリーンボランティア森木会の方々の話を聞いた。
お話を聞かせていただいたのは、同会事務局で市の職員でもある荻野さん、活動されているメンバーの鈴木さん、高野さん、宮沢さんの4名。
多摩グリーンボランティア発足の経緯
- 発足のきっかけは、財政逼迫により雑木林に手を入れられなくなってしまった市と、荒れた雑木林を改善させたいと思っていた市民の意見が一致したことだった。市の呼びかけで最初のメンバーが集まり、「花王・みんなの森づくり活動支援」の助成金が、立ち上げ時の道具購入などの手助けとなった。
現在、活動5年目。市内にある4つの公園(一本杉公園、よこやまの道、多摩中央公園、和田緑地)の雑木林の管理を担っている。公園ごとに4つのグループに分かれ、月に2回、それぞれ担当の公園の雑木林で、下草刈り・落ち葉かき・間伐・伐採など行い、管理している。
活動しているのは主に60代~70代、定年退職後の人が多い。「若い人にも来てもらいたいですか」と伺うと、「来たら刺激にはなるだろうがきっとこないだろう」との返答。自分も若いころ森に入るなんて想像もしなかった、というのがその理由だ。
活動に参加している人の中で、以前に山仕事に触れたことのある人は少ない。参加のきっかけは、市と森木会のメンバーが協力して開くグリーンボランティア講座(月1回全10回)だという。この講座は森木会と市が協働で主催するもので、森木会のメンバーは研修のサポートを担当している。グリーンボランティア講座の特徴は実習が多いこと。しかし、実際は10回だけの研修では山仕事なんてほんのさわりにもならないと森林会の方々はいう。講座に参加し、継続的に活動していくことで技術や知識が身についていくのだという。森木会はこの講座の一期生が中心で作った。2006年9月現在、4期生まで終了していて、講座の修了生がそのまま森木会のメンバーとなり、継続して関わっていくことが多いという。 - 一本杉公園での作業
戻ってきた植物たち
- 森木会が手を入れるまでの雑木林は、誰の手も入っていない荒れた森となっていた。一般に、雑木林のサイクルは15年とされ、定期的に人間の手が入らないと光が差し込まなくなり荒れた森になってしまうのだ。
森を手入れするということは、生態系を守ること。現在、森木会の活動により、荒れていた雑木林には光が入り、造成によって少なくなった多摩地域の固有種、タマノカンアオイなども戻ってきた。また、フデリンドウ、ヤブレガサなども植生している。落ち葉をためた場所にはカブトムシの幼虫がたくさん確認された。
活動を続けるなかで問題がないわけではない。雑木林はもともと人々の生活に使われていた。生活に雑木林が必要でなくなっている現在、雑木林の活用方法が問題である。現在、森木会では、ホダ木を取りシイタケ栽培をしたり、炭焼きを行ったりしている。森木会の方からは、所詮、「ごっこ」にすぎないのではないかという気がする、という声もあった。活動開始から5年たち、だいぶ落ち着いてきて、これからの長期計画を立てているところだという。 - 一本杉公園を通る古道
活動メンバーの熱い思い
活動に参加して楽しいことはなんですか?と聞くと、作業そのものが楽しいのと、いろいろな人に会えるというのが楽しいという答えが返ってきた。出来る範囲で楽しみながら、というのがモットーだそうである。自らも楽しみながら雑木林を守っていく、楽しそうにそう語るその姿に感動を覚えた。
森木会の方々にとって、かつて自分たちが子どものころに遊んだような森はもうない。しかし、ここにある雑木林を守り、後世に残すことはできる。雑木林では、生態系が多く残り、子どもたちが遊べる場所となっている。『小さいが、だからこそ残していきたい。』森木会の方々はそういった思いで活動をしている。
今、森で遊んでいる子どもたちが将来大人になり、自分の子どもを連れてまた森にきてくれるといい、そういう願いも持っている。