企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
旧東海道沿いにあるJR東海道線・二川駅を降りると小高い森が見える。ここが、「岩屋緑地に親しむ会」の活動場所だ。昔から人々はこの森へ入り、燃料や肥料を採り、森と共に生活してきた。森もまた人手が入る事で里山としての生態系を保持して来た。この森は岩屋緑地と呼ばれ、岩屋観音がある信仰的な意味合いも含む森であり、人々の生活と深い関わりを持ってきたことが窺える。小学生の遠足はこの森の桜を見に来ることだったと会員の方は言う。見晴らしが良い旧東海道沿いにせせりだすこの森は今も変わらず往来する人々をどこか温かく見守っているように感じられる。
岩屋緑地に親しむ会の発足経緯
- しかし高度経済成長期に入ると、森と人々の相互的関係性に変化が生じ始めた。物心共に豊かな社会になり、里山で燃料や肥料を調達しなくとも生活が出来るようになったからだ。人々が森から去り始めると、森の生態系バランスは崩れ、森は荒廃し鬱蒼とした暗い森へと変貌し、ますます人々の生活の中から孤立していった。
こうした状況から1999年、愛知県豊橋市は市の再整備計画を立て、変貌してしまった岩屋緑地の復活に取り組み始めた。'再び人々で賑わう森に'というテーマのもと、市民の中から雑木林管理者を輩出しようと、2000年に市主催の「里山管理ボランティア養成講座」を実施。62名もの市民が受講する事になった。翌2001年4月、講座修了者の中から「岩屋緑地に親しむ会」が発足されることとなった。彼らは、'人々で賑わう岩屋緑地づくり'のコンセプトの下、'明るい森づくり'を具体的なテーマに掲げ活動を開始。まさに市民による市民のための森づくりのスタートであった。 - 整備された森と小径
明るい緑地づくり
暗い森と明るい森、一体どんな違いがあるのだろうか。実際に「岩屋緑地に親しむ会」の皆さんと、散策してみた。暗い森はまず、太陽光が地面まで届かない。そのせいか、全体的に暗く、湿度も多くジメジメした雰囲気だ。また木々は皆高く、森の中に迷いそうな感覚に襲われる。逆に明るい森は、太陽光が地面まで届き、葉脈が青々と透けて見え、幹ががっしり地面に根を降ろし、色鮮やかな色彩が目の前に広がる。全体的にカラッとした空気感で、木々は背が高いのもあれば低いものもある。
彼らは、木々を間伐しコナラの木に植え替える事を優先事項の一つに挙げている。コナラとは俗に言うどんぐりの木であるが、落葉樹に分類され、きのこの栽培木としても利用できる。落葉樹は冬になると葉を落とし、十分な光を地表に届かせる。すると光を浴びた落ち葉は腐敗し、肥料になり肥沃な土地を作り出す。こうしたコナラの性質を利用し、彼らは岩屋緑地に光と肥沃な土地を作り出している。さらに間伐した木々でチップを作り、お手製の遊歩道を作る取り組みも行っている。遊歩道はなだらかな斜面で木々の間をくねくねと通る。この森では木々が主役である。大木のために迂回する中で、人間と森が共存していることを体感する。「遊歩道一つとっても、訪れた人が森との親しみ方を感じてもらえたらいいなぁ」と、会員の森祥剛さんは目を細めて言った。
親しむとは・・・・
- 団体名からも分かるように、彼らは「保全」を第一目的としている団体ではない。森に親しんでもらい、再び森に人が戻ることが森再生の一番の近道であり、人々で賑わう森が彼らの理想とするところだからだ。彼らは市民参加の企画を多く開催している。「どんぐりとキノコまつり」、「きのこの菌打ち会」、「落葉掻きと焼き芋の会」など、企画のパンフレットを近くの小中学校等に配り広く参加を呼びかける。こうした活動により、小中学校から講師を依頼され、子どもたちと共に森に入り、森の大切さや共生する意義を共に考える機会が多くなった。「植樹祭」での親子の作業は、親子間のコミュニケーションを創出している一面もある。この森が人と人の出会いと喜びを学ばせてくれる場所になっている。「森に親しんでもらう活動が、環境教育になり親子間や人間の交流を生み出す、そして森への愛着がいつか人々を森に戻す」という森さんの言葉が、明るい岩屋緑地の未来を語っているよう感じた。
- 森を案内くださる岩屋緑地に親しむ会のみなさん