企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
うみべの森を育てる会
和歌山県にほど近い大阪府泉南郡に、大阪湾の海岸線に沿って、長さ約2km・広さ61haの広大な公園がある。この公園は「大阪府営せんなん里海公園(以下、公園)」と呼ばれ、森あり、海水浴場あり、ビーチバレーの専用競技場まであるほか、ヨットレース・花火大会などのイベントも数多く行われている。
公園の一部は埋め立て地であるが、もともと海であったことが想像できないほどに草木が多い。海風も強いが、風食に負けず、花や木もいきいきとしている。「うみべの森」とは、この公園の中にある、古くからの樹立地のことである。
うみべの森をはじめ、公園全体で活動する「うみべの森を育てる会(以下、育てる会)」について、代表の西台幸子さんをはじめ、多くの会員の方からお話を伺った。
荒れた森をよみがえらせる
- うみべの森は、20年程前から管理が追いつかなくなり、荒れていた。1997年、周辺一帯が公園として開設されたが、荒れたままだったうみべの森をよみがえらせようと、2001年、行政と市民が検討委員会をつくり、一体となって維持管理の方針を考えた。1年間の検討を経て、市民の何人かがグループをつくり、2002年に育てる会が立ち上がった。
育てる会では、ここを「子どもたちの学習の森」また「市民の憩いの森」にするためにこの森を育てようと決め、通路作り、草刈りなどから始め、「花王・みんなの森づくり活動支援」で苗木などを買い、市民の参加を呼びかけて植樹祭を行った。今では、ビオトープ(小さな溜池状のもの)をつくったり、うみべの森以外の公園の広い範囲にアラカシやヤマモモなど様々な樹木の植樹を行うなど、活動の範囲が広がっている。また地域住民や他のボランティアグループに、うみべの森の素晴らしさを知らせるためのイベントを行うなど、メンバーの気持ちとともに活動が充実してきている。
現在、活動日は毎月2回。森管理活動は主に通路整備と草刈りであるが、維持管理だけではなく、自然保護、環境学習の場の提供に向けた活動も行っている。そのため、活動のフィールドは公園全体に及んでいる。育てる会の会員数は約45名。広大なフィールドの整備はつらいが、会員のみなさんも無理をせず、みな楽しみながら、自分ができることをするとのことであった。
公園内にあるビオトープについて、面白いお話を伺えた。
子どもたちの学習用にと作ったビオトープにしばしば穴が空けられ、水が抜けてしまうというのである。なんと犯人は、カニ。この地にもともと生息していたカニが、池の壁に穴を開けてしまうのだ。
けれども育てる会の皆さんは、むしろ喜んでいるように見えた。数を大きく減らしていたカニが、穴を開けられるくらい増えたことを意味するからだ。森を守ることによって、このような生態系が守られている。 - 広大なせんなん里海公園
繋がっていく気持ち
- 育てる会のみなさんは、なぜ、ここの整備を快く行っているのか。
うみべの森には、ササユリ、シュンラン、コクランなどの草花が広く生息している。皆さんはこれらの希少な草花を大切にし、また次には何を植樹しようかなど、楽しそうに話し合っていた。それだけではなく、カニやカブト虫などの生態系のすみかをつくったりと、多種多様な生物が生息できる環境をつくっている。
会員の一人がおっしゃっていた。「まずは、自分が楽しく活動をしていないと」と。確かに、この会の雰囲気は明るく、みんな笑顔が絶えない。日々が楽しく、とてもこの活動にやりがいを感じているように思えた。
公園の近くには電車が通っており、すぐ近くに住宅地も見える。ある会員の方は、公園の近くに住んでいるが、会社勤めの頃はこの森の存在を知らなかった。しかし、定年期を迎え、ここの存在がわかり、この森のすばらしさを地域住民に知ってほしいと思い、この会に参加したのだという。またある人は、子どものときには、自然の中でよく遊んだが、現代の子どもは自然の遊び方を知らない子が多く、この自然のすばらしさを伝えたいという。
この地域に住む人たちにもっとこの森に親しんでもらいたい、自分の手入れをした森で子どもたちに遊んでもらいたいという思いは、皆が共通して持っている。自然の良さは、自然が好きだからこそ伝えることができると思う。今後、育てる会のみなさんの思いが、ここに住む人たちの意識や気持ちを変えていくことだろう。 - フィールドを案内くださる代表の西台さん(中央)