企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

櫻守の会(団体のウェブサイト

兵庫県宝塚市、JR宝塚線宝塚駅から10分ほどの武田尾駅で降りると、大阪の市内のにぎやかな雰囲気とは打って変わって、山に囲まれ空気がずっしりと重い。この山に、春になると桜が咲き、ピンクのじゅうたんをひいたようになる里山がある。ここが櫻守の会の活動場所「桜の園 亦楽山荘(えきらくさんそう)」である。
亦楽山荘への道は、1986年に廃線になったJR福知山線の跡地だ。古びた枕木やトンネルもそのまま残っており、廃線前の雰囲気を容易に想像することができる。廃線敷きは川に沿ってのびており、山に囲まれているため自然を満喫できる。さらに川下に行くと亦楽山荘の入口につながる。ハイキングをしながら桜を観賞できる、なんとも贅沢なコースである。

「亦楽山荘」と櫻守の会

亦楽山荘はもともと、民間の桜研究家である笹部新太郎の演習林だった。笹部氏が亡くなった後、長期にわたって荒廃が進んでいたが、宝塚市が一部を買い取り、遺族から寄贈されたエリアと併せて、1999年4月に市の里山公園としてオープンした。これを機に、それまで桜の植樹ボランティア活動をしてきた市民の有志が、荒廃した里山を何とかしたいと思い、市と協議の末、自然に親しみながら里山整備作業・管理活動するグループとして、「櫻守の会」を結成した。
笹部氏ゆかりの小屋が、活動の拠点となっている

櫻守の会の配慮

櫻守の会の方たちは傾斜のある山の中に入り、枯れ木や絡み合った木々を間伐したり、生い茂った雑草を刈って林床に日が当たるようにすることで、里山の植生を豊かにし、桜の景観をよくしている。平地でない山の傾斜の中で作業をすることはとても大変だし危険も伴うであろう。櫻守の会の方たちはこのような作業を誰かに頼まれてやっているわけではなく、自発的にやっている。
このように櫻守の会の方たちを突き動かすものは何かと聞いてみると、会長の長岡一夫さんは、「会員も活動しながら大いに楽しみ、癒されています。多くの来訪者があり、楽しんでいただけることが何よりも喜びです」とおっしゃっていた。亦楽山荘内のハイキングコースには彼らが切った木々を利用して、橋や階段、道の枠がきれいに作られている。ここを訪ねてくれる人に対する温かい配慮が感じられた。

多岐にわたる活動

櫻守の会は里山整備以外にも、中学生の社会体験活動の受け入れや、公共イベントでの自然環境保全、里山保全の啓蒙や県民向けの里山講座受託実施、また親子森づくり体験活動を行っている。その体験活動の場として、「ゆずりの葉の森」という里山がある。阪急電鉄梅田駅から30分ほどの阪急逆瀬川駅で下車、さらにバスで15分の団地の裏にある。親子森づくり体験活動では、森の動植物の解説や木登り、ブランコなどの遊び、間伐体験などを行っている。
取材で訪れたときは、きのこ博士として子どもたちから慕われている同会会員の中子(なかご)さんが、参加者を連れて里山を歩きながら植物の解説をしていた。子どもたちの目はとても真剣だ。中子さんの説明が終わるとすぐに、「きのこ博士!これは何?毒きのこ?」と活発に質問を投げかける。自ら学び吸収しようとする子どもたちのまっすぐな姿勢がうかがえた。親御さんも「とても楽しそうにしています。ここに来ると子どもが生き生きとしているのです」と、自然を通して子どもたちの変化を実感している。参加者のほとんどはリピーターが占めるそうだ。
ゆずり葉の森での親子森づくり体験活動

櫻守の会の願い

中子さんは活動を目指すものをこう考えている。「昔は、森で木を切って薪にしたり葉をとって薬草にしたり、自給自足の生活が行われていました。けれども、ガス・電気などのエネルギー転換、グローバル経済の浸透の中でそのような生活は失われていきました。そうして今深刻になっているのが環境問題や食糧危機です。今は転換の時期であり、生活を見直すきっかけ、つまり自然と共存して生きていくきっかけを与えたいと思ってきます。このような意味において子どもたちに自然に触れてほしいのです」。自然と触れ合いその素晴らしさを知る。そのことによって自然をいたわり大切にする心が生まれる。これこそ櫻守の会の方々が、現在そして未来の人々に感じてもらいたいことだ。
これからも亦楽山荘やゆずりの葉の森をはじめ、さまざまな形で自然と触れ合う場所を提供してくれる櫻守の会の方々に期待するとともに、そういった場所にますます多くの人が訪れてくれることを願う。
活動に参加して-執筆担当:牧村佳代 東京外国語大学外国語学部中国語学科櫻守の会の方はとてもエネルギッシュで熱く、話しているだけで里山保全に対する高い意識が伝わってきた。また現場で長い経験を積んでいて植物の名前やその特徴などにとても詳しくて、その知識は豊富だった。小学校のときに習った教科書の何だかピンとこない理論上だけの話とは違い、実際の現場にいるからこそわかる真実味のある話だった。ゆずりの葉の森で一緒に子どもたちと自然体験教室に参加したときも、子どもたちが楽しそうに木に登ったり、虫を捕まえたり、植物を眺めている様子が窺えた。教室で学ぶだけでなくて外に出て実際に自然に触れ合ってはじめて自然のすばらしさを知り大切にしようという心が芽生えるものだと思う。このような自然体験をもっと多くの子どもたちに味わってほしいし、こういった体験場を提供してくれる大人たちがいるということはまだまだ日本の未来も明るいと思った。これからも櫻守の会のような団体の活動が盛んになるよう、個人がそして社会が意識を高く持っていくことが大切だと思った。
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