企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
男たちの手によって森に青空が帰ってきた!
- 「ほら木が倒れるよー!」チェーンソーを持った中年男性が、傾斜面の下にいる仲間に声をかける。
急に倒れないように計算されて切り目を入れているので、コナラの木はゆっくりと倒れていった。倒れてみるとその木が驚くほど長く太かったことに気がつく。木が生えていたところには、秋の高い空が広がっていた。
「木々を生えるがままにするとやがて日光を遮り、強い植物だけが生き残ってしまう。また、木が二酸化炭素を吸収するといっても50年ほど経つと木の成長が緩慢になるので、効率のよい二酸化炭素吸収のためには20年くらいで切って森を若返らせることが欠かせない。」
目を丸くしながら倒れる木を見ている私たち学生レポーターに、いせはら森の会の会長仲野三男さんが解説してくれる。森を守るおじさんたち。でも決して気負っていない魅力的なおじさんたちのいるいせはら森の会にお邪魔してきた。 - 手入れによって景色が一層きれいに見える
やってみようか、の精神から生まれた草の根の活動
- 総合運動場前でバスを降りると、笑顔の男性二人が待ってくれていた。前出の林野庁出身の仲野さんと、平日は勤め、週末、森で汗を流す事務局長の石坂昭夫さんだ。
「里山ボランティアいせはら森の会」は、神奈川県伊勢原市の伊勢原総合運動場の一角、約1.5ヘクタールの峰山地区を拠点に活動している。他に5ヘクタールの水源林指定地区の杉人工林も活動場所にもつ。
いせはら森の会発足のきっかけは、8年前のみどりのまち振興財団にさかのぼる。戦後の工業化に伴い、日本の森が荒れてきたこと憂慮した伊勢原市が、平成11年にみどりのまち振興財団を起こした。里山再生の必要性を伝えるための勉強会を数年続けた後、4年前にボランティアによる森づくり活動として財団から独立した。
現在会員は33名。そのうち女性会員は6名。平均年齢は約65歳だ。年に一度の総会でその年の活動計画を決めるが、毎回の参加義務はない。都合がついて集まった人たちで週末に作業をしている。 - 森づくりをおおらかに楽しんでいる仲野さん
季節の移り変わりを肌で感じられる活動がここにはある!
「自分でつくった炭を家で使うのが楽しい」と話すメンバーもいれば、「木を切るときが好きだねー」と笑うメンバーもいる。森には普段の仕事や生活だと体感することの少ない、季節ごとの仕事がある。
例えば総合運動場の一角の放置された雑木林の木を整備して、その木でもって自前の炭焼き窯で炭焼きをしたり、ほだぎにして椎茸栽培をしたり、ドングリを育てて植林や、年に一度小学生向けの体験学習も行っている。落ち葉から堆肥も作っているが、その堆肥はカブトムシの幼虫のふかふかのベッドとなっている。堆肥の表面を少しめくると、まるまる太った幼虫が丸くなって眠っていた。
ここが日本一だよ、いせはら森の会!
「いせはら森の会のここが日本一だっていうところはありますか?」
参加されているメンバーに直球な質問を投げかけてみた。
「そんなものはねえや。日本一と思ってないもん。」と笑顔で言いつつも、「ボランティアの心意気が日本一。全部無償の奉仕で来ている本当のボランティアだ。」と一人が答えてくれる。
日陰をつくっていた木を切り、下草刈りをして太陽が届くようにすると、春に思いがけない花が咲くという。
「こういう花が隠れていたけれど、昔からあったと感じるのがうれしいときだ。」
いせはら森の会のメンバーと話すと、森を整備することを楽しみながら、それぞれのペースを大切にする会の雰囲気が伝わってくる。楽しむこと、環境を守ること、人に喜ばれること。いせはら森の会の活動では、その三つの要素が三位一体になっている。だから無理がなく、続けられるのだろう。
昼過ぎ、まだ日は高く森の緑が濃く見える。半日作業を一緒に行い、爽やかな達成感に包まれながら帰路についた。