企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
東京から電車に揺られること約30分。千葉県松戸市は、東京のベッドタウンである。開発の波に押され、森が消えていくこの町で、楽しみながら、住民と調和の取れた森を残していこうとする団体がある。それが、今回うかがった「囲いやま森の会」だ。
常盤平駅から歩いて5分ほどのところに突如として現れる、見上げんばかりの森に足を踏み入れると、心地よい緑とともに、見るからに生き生きとしたメンバーの方々が出迎えてくれた。
楽しく、気持ちよく
- 松戸市では、市民と協働で、樹林地の保全推進を目的とした「里やまボランティア入門講座」を実施しており、現在までに受講を終えた1~5期生が、それぞれ団体を設立している。その中の、2期生を中心に設立された団体が「囲いやま森の会」である。市に働きかけて個人が所有する森を斡旋してもらい、そこで活動を行っている。
1期生は森に詳しい人、3期生はもの作りの好きな人が多かったりと各期で作られている団体には異なる特徴がある。2期に当たる囲いやま森の会は「自由がきくのがいいところ。しばらく来なくてもスッと入れて、いつでも自由に来られる心地良さがある」と会員の山田幸子さんは言う。肩肘を張らず、自分たちのペースで気持ち良くやっていく。会員の三嶋秀恒さんは言う。「楽しんでやることが長く続けられる秘訣」。メンバーの方々が醸し出す空気は、初めて訪れる僕にとっても居心地のいいものだった。 - 囲いやま森の会の活動場所。
町の中にも美しい自然が残っている。
心躍る囲いやま
- 「囲いやま」とは、畑に囲まれていたことから付けられた森の名前である。昔は湧水池もあり、主に薪炭や堆肥を供給していたが、時代の流れとともに利用されなくなり、40年以上も放置されていた。そのため、活動を始めた頃は大人の身長以上の藪が生い茂り、とても人が入れるようなところではなかった。「こんなに高い草が一面に茂っててね、ちょっと離れると見えないから、おーい、ここだよ、ってやってたんだよ」と三嶋さん。苦労話が楽しい思い出話になっていた。
今は定期的に、不法投棄ゴミの清掃や、枯れ木や病気の樹木の切り倒しなどをして、人の手を入れることにより森を管理している。そのかいあって、人を寄せ付けなかった森は、笑顔が溢れる憩いの場となった。
囲いやま森の会が他団体と共催して行う "森の楽校"では、近隣住民が家族連れで参加でき、木を使った巣箱や名札作り、虫捕り、隠れ家作りなどをして森を体験できる。このイベントでは、親は子どもの創意にびっくりし、子どもは親のがんばりにびっくりするそうだ。囲いやまは人々の気持ちを解放する。会の方々も例外ではない。「コナラの木にシイタケの菌を付けたから収穫が楽しみだ」「腐葉土を作ってカブトムシやクワガタの幼虫の住み家にしたい」さらには「あそこにツリーハウスを作りたい」など、森を歩く会の方々からは、次から次へとアイデアが溢れ出ていた。
都市近郊の森ゆえの強い想い
- 森の素晴らしさを知っているからこそ、森への想いは強い。都市近郊では、森の所有者が亡くなると相続税の問題から、森は売られ、そこには住宅や駐車場が建てられるのが一般的な流れになっている。たとえ売却を免れたとしても、人の手が入らなくなった森は、枯れ枝や倒木が散在したり、生い茂った樹木が日陰を作ったり、さらにはゴミの不法投棄場所となったりすることにより近隣の住民の迷惑になることがしばしばだ。
松戸市も例外ではない。「森が迷惑施設みたいになってしまっている。緑が嫌われるはずがない。」会の代表である野口功さんの言葉には悔しさと悲しさが滲み出ていた。そんな状況だからこそ、囲いやま森の会に責任を持って取り組んでいる。近隣住民に、「この森があってよかったね」そう言われるような森にしていきたいと言う。実際、囲いやまを訪れた人たちは皆、「町の中に、こんな大きな森があって、こんなに自然が残ってるんだ」と驚き、同時に、その「気持ち良さ」に驚くと言う。
森の魅力と、それを伝えようとする森への想い。その二つを併せ持つ囲いやま森の会は、これからも確実に、人と森とを結び付けていくだろう。 - 代表の野口さん。
楽しみながらも責任を持って活動に取り組まれている。