企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
特定非営利活動法人 境川の斜面緑地を守る会(団体のウェブサイト)
東京都と神奈川県の境には、全長52kmに及ぶ境川が流れている。この川の流域に僅かに残された緑や水辺に住む生物を保全する活動を行っているのが「NPO法人境川の斜面緑地を守る会」(以下、守る会)である。
1995年相模原市鵜野森に突如浮上した大型マンション開発計画をきっかけに「なけなしの緑を残したい!」という思いから始まった会の活動は、現在境川の中流を中心とした全5ヶ所を拠点とし、緑地の保全・管理を行っている。
今回、活動拠点の一つ、横浜線橋本駅にある「多自然川づくり」を行っている橋本河畔林を訪れてみた。
自然のままの蛇行を残したい!
- 会の代表理事である太田浄子さんに案内されて見えてきたのは、S字を描き大きく蛇行した川と土のままの天然河岸。昭和初期のかつての日本のような自然のままの川の原風景。これが多自然の河川である。崖のようにそびえる土岸には小さな穴がちらほら。(カワセミの巣だ!) 下を見ると小さな小動物の足跡。(イタチかな?) この川には他の川では味わえない驚きや、発見にたくさん出会える。
そもそも1997年当初、神奈川県はこの境川の橋本河畔林を伐採、公園にし、真っ直ぐな裸の川にする計画であった。しかしそれに待ったをかけたのが守る会である。建設省から講師を呼び、県の担当者と一緒に現地学習会を行い、当初の計画を全て白紙に戻し、県と設計の段階から何度も話し合いを重ねた。結果、自然のままの蛇行、土岸、河畔林を残す事に成功したのだ。
現在、橋本河畔林はわずか800㎡にもかかわらず、絶滅危惧種といわれるアズマイチゲ等を含む120~130種ほどの非常に多くの植物が生息している。またアオサギやアカネズミ等多くの生物がここで暮らしている。首都圏のベットタウンとして宅地化が進められたここ橋本に僅かに残された小さな河畔林は、いわば境川に浮かぶ「生物の宝島」のようである。
- 多自然型河川の風景
地元に愛され地元の手で守る緑地に...
- 「私たち、ゴリゴリの自然保護団体なんです(笑)」
太田さんはそう笑って話した。昔からの貴重な生態系が開発を免れて唯一残っていたのは、開発しにくい川沿いの斜面林だった。そのため、守る会は、「開発、外来植物等から、境川の元々あった自然を守る」という強い意志と情熱を持ち、その僅かに残された緑を守るために署名や募金等の懸命な活動を行ってきた。収穫祭など多くの会が行っている“お楽しみ”は少ないけれど、林が残ることが会員にとって、本当の“楽しみ”であった。
そして今、守られた緑をどう維持管理していくかという活動に変化しつつある。住宅地に近い林は、落ち葉や防犯面等で周辺住民から迷惑施設と言われることも多く、住民の理解を得るのは大変だ。しかし、開発の進んだ橋本に住む子どもたちにとって、この林は彼ら唯一の自然となっており、小学校の総合学習でも利用されている。
「橋本河畔林は小さいけども利用するニーズの高い林です。貴重な部分は壊さないでいて、みんなに好感を持ってもらえる林にしていきたい」と、太田さん。河畔林の手入れには、近隣の人も参加している。「草刈やごみ拾いなど地道な活動ですが、地元の人たちが中心になって手入れをしてくれることによって、ますます地域に愛される林になると思います」と太田さんは語る。 - 草刈作業の風景
水と緑と市民をつなげるコーディネーター
- 「私たちが目指しているのは、川づくりと一体となった森づくりなんです」
太田さんは、会の魅力についてこう断言した。川があるから林が作られ、林があるから川が守られる。川と林は一体のものだと考え、会では、河畔林といった川沿いの緑、右岸と左岸、さらには上流から下流まで川と緑をつなげる活動を行っている。例えば現在、境川流域全体を理解してもらうための「境川案内ハンドブック」の作成を考えている。今後は更なる流域間ネットワークの構築に向けて、源流で活動している市民組織との連携も視野に入れているそうだ。
会の活動は、「水と緑と市民をつなげるコーディネーター」として、川の恵みと同じように、流域全体にさらに拡がっていくだろう。