企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
「この雑木林をこのまま残したい。公園や宅地にされてしまうのではなく、このままの緑地を保存していきたい」。そんな強い願いが、昔ながらの里山「なな山緑地」を支えている。今回、「なな山緑地の会」の会長 高木直樹さんと副会長 相田幸一さんにお話を伺った。
里山の再出発と悠々とした雑木林
- 「なな山緑地の会」は、このお二人を中心に総勢45名のメンバーで、多摩と八王子の境、多摩市和田にある10,692㎡の土地で活動している。2003年4月1日、20人ほどのボランティアが集まり、この会は始まった。尚、今年4月隣接する雑木林、約0.7haの管理を市より委託された。
多摩地区の開発によりこの地域の緑地は急激に失われ、所々に開発を免れた緑が残されているだけになった。そして今、残された緑地さえ相続などの問題で消えようとしている。所有者が亡くなり多大な相続税が発生した場合、土地を売って相続税を払うか、国や自治体などに土地を寄付するしか、今の法律では方法はないのだ。
「なな山緑地」もそうだった。多額の相続税が発生したため、この緑地の存続が危なくなってしまった。雑木林の相続とともに、先代の地主の思いを引き継いだ住崎さんは、どうしてもこのままの状態で後世に残していきたいと強く願っていたが、里山の維持管理には手間や費用がかかる。自治体に寄付したとしても、里山として残されず、管理された公園になってしまう恐れがあるのはこのためだ。
そこで、緑地を残して欲しいと願う近隣の住人と地主である杉崎さんが協力し、多摩市と話し合った結果、市に土地を寄付し、管理を当初、近隣の自治会を中心にボランティアで行うことで、緑地を里山の状態のまま残すことを可能としたのだった。
先代の地主が生前からこの緑地を里山として手入れしていたことと、会の活動がすぐ始まったことで、緑地はさほど荒れることもなく、市への寄付から4年を経た今、里山特有の木漏れ日が美しい雑木林の姿を見せてくれている。 - 訪問者を迎える手作りの看板
「世界でここにしかない」里山の自然
- 里山は、人の手が入らない原生林とは異なり、独特の自然を有している。日本の希少植物の約8割は里山にあるといわれ、その価値はとても大きい。なな山緑地には東京都の絶滅危惧種に指定される植物もあり、この緑地の環境がいかに貴重であるかが分かる。
会では常に動植物の観察と記録を行っており、草花は140種、木は80種も確認されている。しかも年に新しく2~3種が発見されているから驚きだ。実際、私が活動に参加した日にも、トビハガネムシという今までに見られなかった昆虫が見つかり、里山に再び動植物が戻ってきていることを肌で感じた。 - 子どもたちに温もりのあるおもちゃを
かけがえのない活動と里山に「戻ってくるもの」
- 里山は従来、薪・炭作りや落ち葉などでできる有機肥料作りの場であった。そのため、なな山緑地でも、木の伐採や腐葉土作りは重要な活動である。それだけでなく、キノコ作りや畑作業も行っており、収穫した取れたての材料を使った四季折々のお楽しみもある。また、近隣の幼稚園児・小学生を集めた自然体験教室も行われている。
子どもの体験学習で興味深いエピソードがあったという。近くの小学校の生徒を呼んで行われたのだが、この森に入ったことのある生徒は1人もいなかった。「理由は、ほとんどの生徒はこの恵まれた自然の中でどうやって遊ぶか、方法を知らなかったからなんです。」高木さんと相田さんはそこにすごく驚いたという。
カブトムシやクワガタ、おもちゃの材料にできる材木や落ち葉などは、子どもたちにとっては宝の山だ。昆虫採集は多くの子どもたちを感動させ、里山は外で遊ぶことの楽しさを子どもたちに教えてくれる。
なな山緑地では、快適で素敵な風景を見せてくれる雑木林の中で、それを守りメンバー皆でその歓びを分かち合っている。あなたも、ぜひ、ここに足を運んで欲しい。楽しくそして充実した活動は、今までは気付くことのできなかったその土地の四季をあなたに届け、もっとあなたを幸せにしてくれるに違いない。