企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

東久留米自然ふれあいボランティア

 市内にいくつもの湧水が存在する水の街。埼玉との県境に位置するここ東久留米市で、東久留米自然ふれあいボランティア(以下、ふれあいボランティア)が活動している。
 ふれあいボランティアの活動場所は、都市化が進むなか、緑ある豊かな自然を残すために東京都が指定した保全緑地である。東久留米市内では8か所が指定されている。
 保全緑地のひとつである南沢緑地保全地域の湧水は、都内で唯一、平成の名水百選に選ばれた清流である。もともと、東久留米市には湧水や川を保全する団体がいくつも活動していた。それらの団体に、都が保全緑地の雑木林を整備しないかと呼び掛け、それぞれから関心を持った人たちが集って、ふれあいボランティアが発足した。
 「雨が雑木林や草地にしみ込み、その雨が湧水となって市内を流れている。子どもたちにも、雑木林と水のつながりを知ってほしいと思っています」、そう話してくれたのはメンバーの豊福正己さんである。市内を流れる川には、絶滅危惧種のホトケドジョウをはじめ、たくさんの動植物が生息し、その環境を守るために多くの市民が関わっている。水は東久留米市の象徴であり、それを支えるのは豊かな緑である。

気軽に来て、自分のペースで

 朝10時、活動場所である前沢保全緑地に到着すると、すでに草刈が始まっていた。ここへは駅からバスで15分、住宅街と工業地帯の中に雑木林が突然現れる、そんな印象だった。
 「おはようございます。じゃあみなさん集まってください。」私たちが到着すると、林の中に散らばって作業していた方々が集まってきた。この日は近所の方も参加していて、総勢17名での活動となった。草刈りをしたり木を切ったり、それぞれがやることを心得ているようで、広い林の中に散らばって、各自のペースでどんどん作業を進めていく。
 「この辺の植物のことは、ほとんどわかりますからね」といって、花を見つけると名前や生育環境を話して下さったのは、代表の小野木英一さんだ。他のメンバーが鎌や刈払機でどんどん草を刈っていくのに、小野木さんは大切そうに植物ひとつひとつに目を配り、はさみを使って少しずつ木のまわりを整えている。
 草刈りに間伐、雑木林での作業は体力勝負だ。だからこそ、ふれあいボランティアではそれぞれのペースが大切にされている。「気楽に来て適当に作業に参加すればよい」と団体HPにあるように、誰がいつ来てもスッと作業に参加できる、そんな雰囲気は「自然の中で動いてみませんか?」と誘っているようだ。
だんだんと雑木林が明るくなってきます

雑木林を守る!ご近所の力

 ふれあいボランティアの特徴は、活動場所が市内全域に点在していることである。その数なんと10か所!同じ場所で活動できるのは平均して年2回。半年かけて市内の保全緑地をぐるりと回る。
 東久留米の雑木林は住宅街に隣接している。手入れがされていない雑木林は、暗く、危ない場所だと思われてしまう。しかし近年は参加人数の減少もあり、ふれあいボランティアだけですべての林を管理することが難しくなってきている。けれども活動場所を減らすと、そこはまた荒れた雑木林に戻ってしまう。
 前沢保全緑地の活動に来ていた近所の方々は、初めての参加だという。みなさんが「自然のなかで動くのっていいですね」と楽しそうに話すのを聞き、地域の方が身近にある雑木林を気にかけ、活動に参加してくれることが、ふれあいボランティアの活動の幅を広げ、東久留米の緑や水を守ることにつながっていくのではと感じた。
近所の方も一緒に、作業の合間のひととき

10か所の活動場所、その苦労と誇り

 作業中は「あの保全緑地では○○が咲いていた」「あそこでは来年△△が咲くんじゃないかな」など、あちこちの活動場所の名前が話に出てきた。10か所で活動するのは確かに大変だ。発足時は、毎回作業道具を持ち運ばなければならなかった。
 しかし、不便さは力を合わせて少しずつ解消していける。自分たちの力で倉庫を増やしていき、2009年には9か所に倉庫を設置し終わった。そして、市内にある大きな林はほぼ全て自分たちが管理し、そこにある植生や希少種を把握しているという誇りを持って、ふれあいボランティアの方々は活動を続けている。
活動に参加して-執筆担当:天野佑香(横浜市立大学国際総合科学部国際総合化学科) 活動に参加したのは9月下旬、まだ夏の暑さが残る季節だ。雑木林の中に入ると、音が静かになり涼しい風が吹いてきた。「気持ちがいいなあ」と素直に思った。
 1時間ほど作業すると「休憩しましょう」と声がかかった。雑木林の真ん中にシートをひいてみんなで集まる。お菓子を食べたり、おしゃべりしたり、のんびりとした時間だ。
 みなさんから目を閉じて風の音や森の音を聞くこと、寝転がって林を見上げる気持ちよさ(あやうく寝てしまいそうだった)など、雑木林の楽しみ方をたくさん教えていただいた。落ちていたドングリの話をしていたら、「それはマテバシイで、こっちはコナラ、これはクヌギで…」と次から次にドングリを見つけてきてくれた。
 小野木一江さんに、10年間も活動を続けてこられたのはなぜかと聞くと、「自然が、呼んでいるのではないですかね」と笑顔で返ってきた。ふれあいボランティアのメンバーには他団体の活動にも参加している方が多い。自然と関わらずにはいられない、そんな自然好きの集まった団体なのだ。