企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
丸山サンクチュアリ
足を踏み入れてみると鳥の囀り(さえずり)や森独特の風の音が聞こえ、木や土の香りが鼻をくすぐる。コンクリートとは違った感触が足の裏を包み込み、目の前に鮮やかな緑が写りこむ。深呼吸をしてみると空気にも味があることがわかる。
ここは千葉県船橋市の東武野田線馬込沢駅から徒歩で15分、坂道を上ると辿り着く丸山の森緑地である。今回、この森の管理をしている丸山サンクチュアリ(以下、サンク)の会長である図司静江さんと事務局の図司忠彦さん、ほか会員の方にお話を伺った。
20年以上の歴史
- 「なにかあると、協力してくれって市役所から電話がくるんですよ。ただうちが古いだけだけどね。」そう語る顔は遠慮しながらも嬉しそうに笑っていた。このようにサンクが市からも頼りにされているのは23年(平成21年当時)という長い年月で培った結果である。
取材をしていると何度か耳にする名前「三神鶴吉さん」。サンクは、もともと探鳥が好きだった初代会長である三神さんが、地元に「自然を愛する会」をつくりたいとの想いから、昭和60年4月に地主と個人交渉して森の手入れをしたことから始まった。初めは一人で活動していたが、やがて仲間が集まり、同年6月6日に発会式を行い、現会長である静江さんを含む8名で「丸山サンクチュアリ」が結成された。
当初の森はゴミが多かったため掃除から始まり、やがて木の手入れ、歩道の整備と活動を続けるうちに森も明るくなり、同時に会員数も増えていった。その実績を市に理解され、平成2年に丸山市民の森(現丸山の森緑地)、平成4年4月に藤原の森(現藤原市民の森)の管理をサンクが受託した。その後、平成20年に静江さんが会長を引き継ぎ、現在は会員数120名の会となっている。
地域に根付く会
- 「昔はね、この周りにもたんぼや他の森があったから、ここでもカワセミなどが観察できたんです。夏は家にいてもホタルが飛んできたし。だけど家やマンションが増え、自然が少なくなってしまってね。」そう話す静江さんは懐かしそうな、でも寂しげな様子だった。20年以上の歳月の中で人口が増えるのと同時に多くの自然が失われた。このような時代背景の中でサンクは地域に根づいた会へと発展した。
丸山・藤原の2つの森に「自然を保全するだけではなく、多くの人に自然を愛してほしい、そのためには体験できる場所が必要」と、「野鳥の森」、「カブトムシ牧場」、「野の花ゾーン」、「シイタケ園」の4つのゾーンを会のメンバーの手で造った。そこでは小学生の観測会が開かれ、カブトムシ牧場作りの手伝いをしたり、参加した子に幼虫がプレゼントされるなど失われた自然を体験できる場となっている。さらにゾーンの間は歩道が整備され、散歩、ランニングコースとして地域の方々に親しまれている。
また、サンクは市や周辺の他団体の主催行事へも積極的に参加している。その数は徐々に増えていき、今では多くの環境団体と関わりをもっている。このように老若男女、団体の枠を問わず、サンクは多くの人達と交流の輪を持ち、地域になくてはならない存在となっている。 - 整備された森とカブトムシ牧場
地球を愛し自然を愛して人間を愛す
- 「(活動日は)できることをやってもらえればいいので、強制はしません。だから和やかですよ。」活動の様子を静江さんはそう表現した。その言葉通り、大まかな活動内容だけ決めて役割分担をせず、各自で作業に取り掛かっていく。様子を見ていると、1つの作業を1人に任せっきりにせずに助け合い、笑い合い、話しつつも手際がいい。あまりの手際の良さだったので、現役時の職業を伺ってみた。すると「その質問は御法度だ。」と返ってきた。思いもよらない返答に戸惑っていると、「ここではみんな平等だ。職業を気にする必要がないからこそ居心地がいいんだ。」と教えられた。
居心地の良い空間は、人を思いやることでできるものであり、それがサンクにはある。つまり、人を思いやる会に惹かれた自然を愛する人が集まっているのが、丸山サンクチュアリである。
「三神さんの『地球を愛し自然を愛して人間を愛す』という言葉は今も引き継がれていますよ。」静江さんの言葉の意味が解った気がした。 - 現サンク会長の図司静江さん