企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

みどりのまちづくりグループ

 愛知県春日井市。名古屋のベットタウンとして開発された高蔵寺ニュータウンの北に広がるのは、県有林「みろくの森」だ。都市周辺の森の中でも特に重要なものとして積極的に整備がされている、尾張地域では数少ない環境保全保安林である。
 そのみろくの森は、2000年の東海豪雨で土砂崩れが起き、山林の一部が崩落するなどの被害に見舞われた。その荒れた山肌にどんぐりを植樹し、山の原風景を取り戻そうとしているのが、高橋勇夫さんを代表とするみどりのまちづくりグループ(以下、まちづくりグループ)である。

森に育つ"どんぐりのこども"

 私達が参加した日は、どんぐり植樹地での雑草刈りが行われた。斜面で鎌や刈払機を見事に操り、茫々と生える雑草をたちまち刈っていく。
 この斜面では現在、日付と植樹者の名札の付いたどんぐりが、のびのびと緑の手を広げている。まちづくりグループの最大の活動として毎年行っているどんぐり植樹祭。これまで親子やボーイスカウトなど延べ1500人が参加し、植樹数は約2000本になった。植樹された"どんぐりの子どもたち"は、グループが手入れをしてすくすく成長している。根張りが深いどんぐりは災害に強く、その落ち葉は腐葉土となり、保水力豊かで多様な生物の住みかを生み出してくれるのだ。
大きく育つ、植樹されたどんぐり

行政と共に

 まちづくりグループは、もともと「春日井の緑の保全をしたい」と集まった10人のメンバーから始まった。グループがまず初めに取り組もうとしたのが崩落斜面の整備=どんぐり植樹であった。子どもが親しめて、根張りもしっかりしているどんぐりであれば、市民が喜ぶ形で荒廃地を整備できると考えたのである。
 しかし、一般市民が立ち入ることの出来ない保安林での植樹は前例がなく、許可がなかなか下りない。「やっぱり辛かったね。」高橋さんは穏やかに話されるが、その一言からは苦労がにじみ出ていた。
 しかし、そんな県有林での活動は、愛知県の「利活用協定」という新しい仕組みによって可能となった。人材や財源の不足の中で、県有林の管理をいかに行うか頭を悩ませていた県は、まちづくりグループの熱意を受け止め、県有林の利活用を市民団体にゆだねる「利活用協定」の制度を整えたのであった。そして、まちづくりグループは協定第一号となったのである。
植樹地での雑草狩りの後に、みなさんと

ボランティアの総合商社

 まちづくりグループの活動は多岐に亘り、どんぐり植樹祭のほか、「水辺のみどりの回廊活動」、絶滅危惧種であるシデコブシの保護活動など、現在11フィールドで13のプロジェクトが進行している。
 「自然は、たとえば緑の保全に取り組んでも、川の清掃、ゴミ問題とつながっていく。仕切りがないんです。」高橋さんは、活動が広がる理由をこう話してくれた。
 グループの目標は、2022年までにみろくの森から市内を流れる大谷川、内津川、庄内川の川沿い14キロを自然豊かな「緑の回廊」で結ぶ、という20年に及ぶ遠大なものだ。
 「私は、この団体をボランティアの総合商社と呼んでいるんです。」高橋さんはそう笑って話す。緑の保全のためには、仕切りのない自然環境問題に、総合的に取り組んでいかなければならないのである。

未来につながる森づくりを

 様々な活動に取り組むまちづくりグループだが、活動を支えている思いは一貫している。
 「自然は手入れをしないといけない。自然と共生することが大切なんです。」そう話す高橋さん。
 「自然に手を加えてはいけない」と考える団体も存在する中、まちづくりグループは、人びとが自然と触れ合える環境をつくること、それによって「心地良い自然」を感じられれば、おのずと人びとの間に自然を愛し、大切にする気持ちが生まれ、結果的に森を未来につなげることができる、そう考えているのである。だからこそ自然を知る場を提供する活動を行い、また活動の報告など情報発信に力を入れている。
 人びとにもともと備わっている「自然を愛する気持ち」を思い出してもらうことにより、森を未来へつなげよう。そんな強い願いが会の活動を支えている。
活動に参加して-執筆担当:土屋友美賀(一橋大学社会学部) 今回の団体訪問の中では、11つに及ぶ活動フィールド全てを見せていただくと共に、活動の際には丁寧に指導をいただいた。その熱意に感激すると共に、これだけの遠大な取り組みに尽力されているメンバーの方々は、一体どんな思いで活動されているのだろうと考えさせられたが、活動参加日の終盤に、メンバーの方々とゆっくりお話できる機会があり、その答えが自分なりに見つかった気がした。
 緑が回復する喜び、仲間と活動ができる楽しみ、今までの経験を生かすことができる充実感、そして、活動が緑のネットワークとなり実を結ぶだろうという希望…。各々メンバーの方が、各々の思いを抱いて活動をしてらっしゃる。それは完全に一致しているわけではないだろが、多様性の中で、自然を愛し、未来を見据え一丸となって遠大な目標に取り組んでいる。その姿には、本当に胸を打つものがあった。
 最後にもう一度感謝の言葉を述べさせていただきたい。高橋さん、そしてメンバーのみなさん、本当にありがとうございました。