企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
特定非営利活動法人 相模原こもれび
神奈川県相模原市、JR横浜線古淵駅から大型スーパーの立ち並ぶ市街地を歩いて15分。突然目の前に現れる広大な緑地がある。「木もれびの森」である。中に入ると、すぐ隣の市街地の喧騒が嘘のように消え、清々しい空気に包まれる。その名のとおり「木もれび」のあふれる美しい森。今回、この森の一部を管理する「特定非営利活動法人相模原こもれび」(以下、こもれび)の理事である、海野基之さん(以下、海野さん)にお話を伺った。
先祖の残した森
- もともとこの土地は、江戸時代から雑木林として利用されてきた。しかし1960年代以降、雑木林は利用されなくなり、放置された。その雑木林を保存しようと、1973年に相模原市から「相模原近郊緑地特別保全地区」に指定されたのが「木もれびの森」である。高度成長期の市街化の波から逃れ保全された面積は73ha(東京ドームの約16倍)に及ぶ。
保存された雑木林ではあるが、利用がなくなることにより林内は徐々に荒廃していった。森の中は薄暗くなり、害虫が繁殖するなどの被害も出た。それを受けて市は、2001年に森林ボランティア養成講座を開講し、2004年、講座の受講生によって、「木もれびの森」の管理に当たるボランティアグループが結成された。そのボランティアグループが2006年にNPO法人化したのが「こもれび」である。
木もれびの森の特徴は、なんと言っても市街地に近いことと、平坦であることだ。近隣住民にとっては歩きやすく、気軽に自然を味わえる。このような平坦で広い樹林地はとても珍しいそうだ。「市民が庭続きで利用できる森」と海野さんは言う。そのため何よりも「入りやすく、見て楽しめる憩いの森にすること」を活動の目標としている。 - 木もれびの森の中央にある広場は、市民や会員の憩いの場になっている
会の結束力
- 木々が豊かに育つための間伐や下草刈りが「こもれび」の主な作業である。管理地を8つに区分けし、各地区を計画的に整備している。
驚くべきはその会員数と作業への参加人数である。現在の会員数が70人と多いのだが、毎回の整備作業にその半数近い30人前後の参加者がいるという。設立時の会員が減ることなく、継続的に活動に参加しているということも、特筆すべき点である。メンバー間の協力が緊密であることが「こもれび」の大きな特徴であると言えそうだ。その訳を海野さんに伺ってみた。
理由の一つは活動内容が豊富なことだ。「こもれび」には上記の整備作業のほかに、植生調査チームや木工チームなど、会員がやりたいことを出来るチームが6つあり、各チームが協力しながら自由な活動を展開している。「一人一人に居場所があるようにね」と、海野さんは言う。
会員のスキルアップの機会を設けていることも重要な要素だ。樹木に関する知識を深める講座の開講や、チェーンソーの資格の取得など、お互い向上しあえる関係を築いている。
「こもれび」が取り組んでいるのは、「既にある森を整備しながら残す」ことである。その課題は、「どの木を残したらよいか手本がないから、試行錯誤を繰り返すしかない」という。そのため「お互いの意見を批判せず、森を残すために知恵を出し合う」関係を築いている。海野さんはこのような「こもれび」の雰囲気を「和」という言葉で表現していた。実際、活動の現場ではコミュニケーションが盛んにとられ、会員の皆さんは賑やかに楽しそうに作業されていた。保全活動は「仲間とできる趣味みたいなもの」になっているという会員の方の声も聞いた。森に対する真摯な姿勢が会員の協力関係を生み、その人間関係が継続的な森林保全につながるという相乗効果が「こもれび」にはある。 - 除草作業前の準備の様子
より多くの人に木もれびを
- これまでの活動の成果が出始め、「間伐など手を入れる量が減ってきた」そうだ。木もれびの森は光を取り戻し、近隣住民が散歩などでその明るい森を楽しむようになってきた。今後は、近隣住民以外の市民にも「木もれびの森」を知ってもらい、より多くの人に来てもらう工夫を考案中のようだ。「平地林であるため車椅子でも入れるという特徴を生かし、森林療法に利用する」という素敵なアイデアを海野さんは教えてくれた。木もれびのあふれる明るい森の美しさを、多くの人と共に楽しむような方向に「こもれび」は進もうとしているのだろう。今後どのような活動が展開され、木もれびの森が未来へつながっていくのか、非常に楽しみである。