企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
どんぐり山を守り育てる会
大阪府豊中市。新大阪から電車とバスを乗り継いで30分程の場所に、シャレール東豊中という大規模なUR賃貸住宅がある。2008年度にはグッドデザイン賞に輝いたこの団地は、複数の建築家たちの設計による個性的かつモダンな街並みでありながら、千里丘陵から受け継いだ自然と見事に共生している。どんぐり山は、そんなシャレール東豊中の前身である東豊中第一団地の頃から敷地内で保全されてきた、5分もあれば山頂まで登れる小高い山である。
街のシンボルを自分たちの手で
- 2004年12月、どんぐり山は存続の危機にあった。団地の建替えに際し、当初、UR都市機構(以下、UR)にどんぐり山を残す考えはなかった。しかし、URと住民で、どんぐり山とその周辺環境を考える「どんぐり山ワークショップ」が開催され、住民からどんぐり山の保全に関する多くの意見が寄せられたのである。
その当時、どんぐり山は手入れらしい手入れがされておらず、落ち葉や表層の土壌流出により枯れ木が目立つようになり、山全体が減退し始めていた。そこで、これまでどんぐり山の荒廃に気付きながらも「あの山はURのもの」という他人意識をもっていた住民たちが、ワークショップを機に「URが手入れしないなら私たちが」と主体的に立ち上がり、どんぐり山の緑を再生・育成していくための組織として「どんぐり山を守り育てる会(以下、守り育てる会)」を発足させたのである。守り育てる会の代表である古川いつ江さん(以下、古川さん)にとっても、どんぐり山は「子も孫も遊んだ"思い出の山"」であり、「周りの環境は変わっても、どんぐり山だけは残っている」もの。まさに"街のシンボル"とも言える存在だからこそ、自分たちの手で残したいと考え、住民たちが団結したのだ。 - 活動フィールドの「どんぐり山」
森を守り育て、楽しむ活動
- "無理せず、楽しく、やってみる"ことをコンセプトに、会員数は71名。自然をただ見るだけにとどまらず自分たちで守り育てていくという地域コミュニティが活性化し、着実に根付いてきていることが分かる。
具体的には、定例活動として毎月1回集まり、どんぐり山一帯の見廻り・清掃や林床手当て(落ち葉止めづくり)などを実施し、山の保全・育成に取り組んでいる。また、このように手入れされた山は、協力会である東豊中幼稚園や東豊中小学校らを対象にした、自然観察会やどんぐり工作、草木染めなどといった子どもたちのイベント活動のフィールドとして利用されている。毎年新しい企画を考案して参加者を募っており、「今は12月のクリスマスへ向けて準備中」だそうだ。会員の方は「住民の「ありがとう」という言葉が嬉しい」「話す相手もいない、行く場所もない。(守る会の活動は)自分の健康にもいい」と笑う。このように、何より会員自身がいきいきと活動している姿が強く印象に残った。どんぐり山を自分たちの誇りとし、一連の活動を"誰かのために"ではなく"自分たちのために"と捉え、当事者意識をもって楽しんでいる様子が窺える。 - 会員の方々の協力で行われるどんぐり山の保全活動
世代を越えて託していくこと
- 現在、どんぐり山は自由に出入りすることができない。手入れしない状態が続いたため木々の痛みがひどく、「手入れしながら見守っている状況。(開放は)木が茂ってしっかりとした山になってからでないと難しい」からだ。古川さんは「今は山に入れなくても、将来的には自由に遊べるように…」と夢見る。一方、団地の約2/3が高齢者で、守り育てる会も60歳以上が中心。古川さんは、「いつまでやっていられるんだろう…」と不安を口にしながらも、「今すぐにではなく、(私たちが)一生懸命に活動している元気な姿を見せて、若い人には何かを感じて欲しい」と語っていた。
周辺環境の変化に揉まれながらも変わらずこの街を見守り続け、住民から自分の庭のように親しまれてきたどんぐり山。これから世代交代を通して住民や守り育てる会は引き継がれていくだろうが、名実ともにどんぐり山が街のシンボルとなる日は近く、今後も住民らの想いとともに街の歴史を積み重ねていくことだろう。