企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
特定非営利活動法人 新里昆虫研究会
群馬県桐生市新里町(2005年合併前の「新里村」)。豊かな自然の中に、織物工場や土蔵造りの店舗など、古い町並みが垣間見える桐生市で、特定非営利活動法人新里昆虫研究会(以下、昆虫研究会)は活動している。「新里自然体験村」と名付けられた約10haの里地里山を活動拠点に、森林整備、農林業体験、自然観察などの活動を行っている。
「ホタル」から里地里山づくりへ・・・
- 1993年、減少してしまったホタルを子どもたちに見せてあげたいとの思いから、現昆虫研究会理事長の小池文司さん(以下、小池さん)を始めとする地域の人々数名によって、昆虫研究会の前身である「ホタルの会」が発足された。それから4年後の1997年、新里村(当時)に「ぐんま昆虫の森」の建設計画が県から発表された。ぐんま昆虫の森とは、野生に近い状態で昆虫を飼育し、来園者はそれを観察できる県立の教育文化施設である。ちょうどその頃、群馬県では、一郷一学(一つの里で一つの学問を究めること)の取り組みが奨励されていた。小池さんたちは、一市民として、当時まだ建設中であったぐんま昆虫の森と将来的に連携して活動することで、新里村の一学を「昆虫」とし、それを新里村の目玉にできないかと考えた。また、ホタルの会での活動をする中で、森林が開発により減少し、ホタルのみならず、そこに生きるさまざまな昆虫の絶滅を危惧するようになった。そしてホタルだけではなく、昆虫全体と昆虫が棲む森も保全したいと思うようになった。その思いを共有した「ホタルの会」のメンバーが中心になり、1999年、新里村の昆虫、そしてその昆虫が生きる里地里山を守り、次世代へ繋ぐために「ホタルの会」は発展的に解消し、新たに「新里昆虫研究会」を設立した。
- 昆虫や希少な植物が生息する新里自然体験村
「生きる力をもらいます。」~活動のやりがい~
- 新里自然体験村が昆虫研究会の活動拠点となったのは2002年のことである。1999年に昆虫研究会が設立されてから最初の3年間は、活動拠点を設けず、新里村全域で昆虫の調査・観察などを行っていた。その後、昆虫研究会の活動を知った現在の新里自然体験村がある土地の地主さんから「昆虫研究会のため、子どもたちが昆虫や自然とふれあえる場所にするため、整備・活用してほしい」という申出があり、昆虫研究会が主体となってその整備に乗り出すことになった。
当初、新里自然体験村の山林は、ササ、クズ、フジなどの植物が人間の背丈より高く生い茂っていた。間伐や下草刈りなどの地道な作業を行い、自然観察ができるような環境にするまで、約3年を要したという。
しかし活動を始めて3年後の春には、絶滅危惧種であるキンラン、チゴユリなどの山野草や、夏にはカブトムシ、ホタルなど多数の昆虫の生息も確認できるようになった。小池さんは「花や昆虫を見ると、生きる力をもらいます。もう絶滅したかと思っていたキンラン、ギンランを見つけたときなんて、そりゃあもう感動したよ」とおっしゃった。美しい草木や生命力あふれる昆虫を発見したときの感動が、活動のやりがいにもつながるのだと言う。 - 水生昆虫の観察会を楽しむ地元の小学生たち
橋渡しされる新里の自然
- 新里昆虫研究会の会員は現在200人おり、昆虫に詳しい人、農作業に詳しい人などがいる。各自がその専門性を活かし、身近に自然と触れ合える環境をつくり、美しい草木や昆虫を発見したときの感動を子どもたちと共有することで、新里の自然を未来へ橋渡ししている。
現在は、活動開始のきっかけとなったぐんま昆虫の森も活動場所の一つであり、会員を派遣し昆虫の飼育に協力している。また主な活動場所である新里自然体験村では、植林体験や昆虫の自然観察調査ができる。さらに、小池さんが新里町で自ら経営している保育園・幼稚園の教職員のサポートを得ることで、田植え体験会や昆虫フェスタなど、子どもたちが惹かれるようなイベントも開催されている。小池さんは、「昆虫を見つけると、子どもたちは笑顔になって、目を生き生きと輝かせるんです。そんな姿を見ると、子どもたちが健全に成長しているんだなぁと思えるんです。本物の自然と触れ合うことで、身近なところから環境意識のめばえを促したい。子どもたちが将来社会に出た後も、ふるさとの自然をなつかしく思ってほしい」などと語ってくれた。子どもたちが自然環境に興味や愛着を持つことで、新里町の豊かな自然は次世代へとうけつがれる。新里昆虫研究会の活動によって、新里町は、昆虫や草木がのびのびと生きる美しい自然と、それに愛着を持つ人々が、共に尊重し助け合う豊かな里へと、さらなる一歩を進めていくだろう。