企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
特定非営利活動法人 里山環境プロジェクト・はとやま
「おはようございます」すがすがしい声が、緑あふれる森の中からいくつも聞こえてくる。ここは、池袋駅から北西に電車で1時間あまり埼玉県鳩山町にある「石坂の森」。町の大部分は岩殿丘陵の中央部に位置し、南部には県内最大規模の『鳩山ニュータウン』がある。
石坂の森が今のように人々が集い、寛げる森になるまでには、特定非営利活動法人里山環境プロジェクト・はとやま(以下、はとやま)による6年間の地道な努力があった。
人と生物を近づける森へ
- 「石坂の森」は、はとやまの代表理事である鈴木伸さん(以下、鈴木さん)が1986年から主催している「鳩山野鳥の会」(以下、野鳥の会)の観察コースだった。小学生の頃から野鳥観察をしていた鈴木さんは、30数年前に故郷の南三陸町(宮城県)に似た環境を求め鳩山町に越して来た。石坂の森でも野鳥観察を続け、別の土地から移り住んで来たからこそこの場所の魅力に気づき「生物と緑あふれるこの里山環境を長く将来に残していきたい」と考えるようになった。
その頃、この森を所有していた開発業者が倒産し、森の約40haは町が買い取ることとなった。これを機に、石坂の森の整備活動に乗り出すため、2005年野鳥の会のメンバーを中心にはとやまを設立した。はとやまのメンバーに町役場で勤めている人がいたこともあり、同年石坂の森で活動を開始した。
活動は、自分たちの手で山頂から麓まで大きなそりのようなものを作り、刈り取った笹やあちこちに放置された粗大ゴミを少しずつ運びだすことから始まった。活動当初の石坂の森は、笹が3m近くも伸び、粗大ゴミが至る所に放置されていた。全て運び出した一年後には、トラック1台分ものゴミが集まったという。
今では、夏にはホタル、冬にはツグミ、ルリビタキなどの四季折々の生き物を誰もが簡単に目にできるようになり、ハイキングや散歩に訪れた老夫婦や親子連れなどがメンバーお手製のベンチで休む姿が見られるようになった。 - 明るく整備された石坂の森
はとやまの「輪」が広がる理由
- 「私たちの活動は地域の人に理解されなければダメ!何をやるにしても、地域の人たちのことを考えています」と鈴木さんは語る。
はとやまのメンバーはニュータウンができた頃に来た方が多く、活動当初は地元住民との間に溝があった。当時を振り返ると、ここには書ききれないほどさまざまなことがあったそうだ。鈴木さんはその溝を埋めるために自分から地元住民の方に“挨拶”をすることを始め、いつも地元住民の人と会うと「こんにちは」と話しかけ、石坂の森の動植物や活動の様子を話していった。現在は更に活動の理解を深めてもらおうと、野草観察会などの住民参加型のイベントも行っている。特にホタルの観察会は人気で、今年は70人もの人が集まったそうだ。
この様な地道な活動が、少しずつ地元の人たちの信頼を生み、10人程で始まったはとやまも会員数は今や45人。地域住民の視点を大切に日々活動されているメンバーの方々だが、草刈り・下刈りなどの定例作業で行った内容を毎回記録し無理なく計画的に行っている。また活動の際には長めの休憩を入れ、果物やお菓子、漬物をつつきながら、たわいのない話もする。「みんなで仲良く、森をつくりあげていくのが楽しい」と鈴木さんは言う。地域の声に耳を傾けながらも、無理のない、ゆったりとした活動が、新たな人々を「石坂の森」と「はとやま」へ呼び寄せている。 - 傾斜面でも手際良く除草する会員のみなさん
地域住民と共につくる石坂の森の未来
- 「石坂の森」を長く守るには、地域住民と一緒に管理して行くことが理想だと鈴木さんは語る。しかし、現在のはとやまの会員の平均年齢は60歳を超えて、今後、地域住民と共に管理できるようにするには、若い世代の入会や次世代のリーダーの育成が課題となっている。
ただ、設立から6年が経ち、少しずつ行政や地域住民の様子も変わってきている。森の保全について鳩山町の自然や景観を活かし、里山景観を大切にしようという全町公園化計画について町長と話をしたり、地元の大学から里山環境についての講義の依頼も来るようになった。今はまだ若い世代の入会はないが、未来の「石坂の森」では、若者からお年寄りまで、地域住民全員が、それぞれのペースで森づくりを楽しむ場所となっているのかもしれない。