企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
四季の会
千葉県松戸市にある新京成線常盤平駅で降り、賑やかな人々の暮らしの音を聞きながら坂を上っていくと、小さな森が現れる。一歩森に入れば、先ほどまでの生活の喧騒は薄れ、代わりに葉の奏でる音色が耳にそっと流れ込んでくる。ここが四季の会が管理するホダシの森だ。
生活の中の小さな森
- 四季の会と書いて、「よんきのかい」と読む。四季の会は2007年、松戸市と市内の森づくり団体とが共催する里やまボランティア入門講座(以下、講座)の4期生が元となり設立された団体だ。講座では森での活動の基礎知識を学ぶことができる。1年間の講座を終え、今後も活動を続けたいと思った会長の中島敏夫さん(以下、中島さん)が、他の受講生に声をかけ四季の会を設立した。講座受講生の先輩方が各期で団体を設立し、森づくりに励んでいることも大きなきっかけだった。
活動場所を求めて市役所に相談したところ、紹介されたのがホダシの森。活動を開始した当初、ホダシの森には不法投棄された大型電化製品や家具が散乱し、笹がうっそうと茂り、木々が道路へせり出していた。そこで最初の2~3か月はごみの処理を行った。ついで笹を刈ると、見通しの良い森へと変化した。また杭とロープで囲いを作り、生活区域との境を作った。道路にせり出す木を伐り、歩行者の安全も確保した。
すっきりとした現在の森での主な活動は、木々の間伐や、草刈り機での下草刈りだ。さらに、隅の小さなスペースを利用し季節の野菜を育てている。彼らの地道な努力が、荒れた森を陽の差す明るい森へと変化させたのである。
- 居住地にある小さな森
森から広がる人の輪
- 現在、四季の会は男性4名、女性7名。設立時は4,5名だったが森の活動を女性会員が友人に伝える形で会員を増やした。そのためか話好きな女性が多く、楽しげな声が絶えない。森の話はもちろんだが、お料理、お洒落、近々行われるイベントと話題の幅も広い。「男はね、ある種の固定的社会で過ごし、ある種のプライドがある。だから(退職後に)地域に溶け込むのが難しい。だけど女性はずっと地域に根差した生活をしている分、人づきあいが上手」と副会長の斉藤幸男さん(以下、斉藤さん)は感心して言う。話好きな女性たちが、男性たちも巻き込みながら人の輪を広げていく。
また、「隣のグループホームの人と話をしたりするのも楽しみ」と中島さんは言う。すぐ隣にあるグループホームで暮らす人たちが、活動中の会員たちと森で過ごすこともあるそうだ。会員以外の人たちが来ることで、いつもとは違う新鮮な空気が流れるのだという。グループホームの方もお話したり、一緒に森を散策したりするのを楽しんでいるそうだ。「すごくね、気持ちのいい森だって言って下さっています」と中島さんは嬉しそうに笑った。
ホダシの森を通じて、人と人とがつながっていくのを感じる。森で作業することがなければ出会うことのできなかった人たちが、こうして和気藹藹と同じ時を過ごしている。
- 空いたスペースで野菜を育てています。奥にあるのがサトイモ。
安らぎの場所をあなたにも
- 「全ての人が、森を守らなきゃいけないと思っているわけではないんですよ」張りのある声に少し残念さをにじませ、斉藤さんは言う。住民の中には、森の存在を疎ましく思う方もいると言う。「都市の中の森ですから、(近隣住民の)生活に迷惑がかからないようにしないと」中島さんがポツリとつぶやいた。11月から2月にかけて、毎回の定例作業は落ち葉拾いに追われる。人の生活と自然との共存は、難しい面も多いようだ。
四季の会が目指すのは、「街の中にある安らぎの森」だ。森とグループホームとの境にはブルーベリーやゴーヤが植えられ、フェンスが植物の蔓が伝う緑の壁となっている。高々と伸びる木には葉が生い茂り、木漏れ日が柔らかく降り注ぐ。地面を見れば、彼岸花の芽やフキの葉が伸びている。街の中にいることを忘れてしまうほど、ここにはゆっくりとした時間が流れている。
ホダシの森は、いうなればまさしく都会の中の“憩いの森”だ。「会員だけに留まらず、近くに住んでいる人にとってもホッと息をつける場所になってほしい」そんな想いで、会員の方々は今日も活動に精を出している。