企業CSR・社会貢献活動
花王株式会社
花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。
いちかわ里山倶楽部
千葉県市川市の北部、JR武蔵野線市川大野駅から徒歩20分のところにある0.37haの竹林、「前畑緑地」。そして、北総鉄道北国分駅から徒歩10分のところにある樹木に覆われた3.2haの貝塚、「堀之内貝塚公園(以下貝塚公園)」。この2か所が、現在『いちかわ里山倶楽部』の活動場所である。両者ともに閑静な住宅街の中にある。実際これらの緑地の中に足を踏み入れると、木々の間を抜ける風が心地よい。そして太陽の光も丁度よく射しこむ明るい緑地だ。
市民の力で緑地を綺麗に
- いちかわ里山倶楽部(以下、里山倶楽部)とは、2006年に市川市主催で開校した「花と緑の市民大学」に参加していた第1期生の方々が結成した団体である。
結成のきっかけは、1日森林整備ボランティアへの参加だった。「1日でもこんなに綺麗な林にすることができるのなら、団体を作って、市川の林全体を綺麗にしていこう」と考えた里山倶楽部代表の堀聰一郎さん(以下、堀さん)らが中心となり、1期生24名で、2007年春、『いちかわ里山倶楽部』を結成した。 - 貝塚内の緑に囲まれた散策路は心地よい空間を作り出している。
小学生も安心して利用できる緑地へ
- 前畑緑地は、人が立ち入れないほどの竹薮だった。里山倶楽部は間伐をし、それらを柵や階段、滑り台を作るために再利用し、子どもたちが安心して遊べる場所に作り上げた。
日頃活動の様子を見ていた小学生が、自分たちの小学校にある、何の植物も生えなくなっていた小高い丘を、前畑緑地同様に再生させたいと考えた。小学校の依頼により里山倶楽部が整備の仕方についての講義をしたことで、小学生とのつながりが更に深まったと堀さんは教えて下さった。
また小学2年生のある児童が、前畑緑地にみんなで遊びに行こうと担任の先生に提案し、それ以来毎年小学生が自然観察に来るようになり、里山倶楽部に沢山の感謝状が贈られてきている。堀さんはとても嬉しそうに、その感謝状の束を見せて下さった。子ども達がこの自然とふれあった経験を大人になっても忘れないでいてほしいと堀さんは言う。
まず結果を出すという姿勢
- 当初は、前畑緑地の整備を行うとホームレスが増える、コウモリや虫が増えるなどといった地域住民の声も聞こえてきていたそうだ。しかし、里山倶楽部の皆さんが黙々と整備を行っていくと、自然に、住民に感謝されるようになった。周囲の人の関心も高まり、今では草刈り機用の電気や作業用の水を提供してくれる人が現れたり、伐採された竹で門松を作りたいと竹を引き取り持ち帰ったりする人もいる。
また貝塚公園もかつては外来種のシュロやアオキなどが生え放題の暗い森だった。しかし整備された今では、すぐ横にある考古博物館の職員の方からも、昔に比べ、案内や説明がしやすくなったと感謝される。「とにかく、大口をたたくより結果をまず出すことが大事です」それが里山倶楽部の姿勢である。
ただ貝塚公園は、最近も土器が発見されたりと、歴史的価値のある史跡であるため、穴を掘ったり、杭を打ったり、木を引きずりながら運んだり、新たに植樹したりすることなどが禁止されている。このような制約や困難はあるが、試行錯誤をしながら、緑地はどんどんと明るく安全な場所へと変化している。最近では朝早くから散策をする人や、お昼ごろにピクニックを楽しむ親子の姿も見られるようになったそうだ。 - 運搬や利用をしやすくする為間伐した木を短く切る。体力が必要な作業だ。
楽しみながら、市川市の緑地に明るい未来を
- 市川市は市の総面積の2.2~2.3%しか緑地がない。千葉県内で浦安市に次いで2番目に低い数字だ。せめて今ある全ての緑地を整備していくこと、それがこれからの目標だ。堀さんは「貝塚でニセアカシヤは外来種ではありますが、全てを切ったりすることなく、今生えている植物も大切にして、安全な緑地整備を行っていきます」と語る。
堀さんは活動について、「社会に貢献しているというよりは、自分たちが遊ばせてもらいながら少しは貢献できているのかなっていう程度ですよ」と、とても謙虚だ。里山倶楽部の皆さんにとっても、これらの緑地は「童心に帰れる憩いの場」であるのだ。「暑かろうが寒かろうがみんな出てきて活動をしていますよ。それに、緑地整備は目で変化がわかる活動だから、達成感があって本当に楽しいです」と堀さんは言う。「10年後には緑地がもっと明るくなって、人で溢れるような場所になりますよ」と語る堀さんの目には、市川市の緑地の明るい未来が描かれていた。