企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人子どもへのまなざし

 「子どもの育ちには大人のあたたかいまなざしが必要」―そういった思いから設立された団体が、特定非営利活動法人子どもへのまなざし(以下、まなざし)である。まなざしは、乳幼児、幼稚園生、小学生やその親など様々な世代の地域の人が集う「子どもが主人公の居場所」を創っている。正会員数55人のうち52人が女性で、その多くが母親世代である。
主な活動拠点である、東京都日野市にある仲田の森蚕糸公園は、イチョウ、トウカエデ、ケヤキなど20種類以上の木々が植生していて、広場や水路もあり、子ども達が遊ぶにはもってこいの場所である。今回は、まなざしの理事長の中川ひろみさん、事務局長の藤浪里佳さんにお話を伺った。

子どもの育ちには大人のあたたかいまなざしが欠かせない

 「子どもが子どもらしく過ごすことが当たり前の社会にしたい」―東京都日野市に住む子育て中の母親達の思いを受け、まなざしは2009年に設立された。「子どもをのびのびと遊ばせたいけど、人の目が気になる」「公園で思いっきり遊ばせることができない」という母親達が、「子どもが主人公の居場所」をつくろうと考えたのが設立のきっかけである。現在実施されているまなざしの活動は、仲田の森蚕糸公園で開催している「なかだの森であそぼう!」、1歳児~5歳児くらいまでの子ども達が毎日野外で過ごす「野外保育・まめのめ」、数日間日野市内外の山や川へ遊びに出かける「川であそぼう!がきんちょ団」や「飛び出せ!冒険隊!!」など多岐にわたっている。
 遊びは子どもにとって挑戦であり、ケガはつきものである。私が活動に参加した日、走り回っていて派手に転んだ子どもがいたが、周囲の大人の手は借りず、泣かずに自分で立ち上がった。ケガや喧嘩を通じて、子ども達は成長していく。その成長の後押しをするのが、大人達の「あたたかいまなざし」である。「大人が子どものことを第一に考える社会、子どもをあたたかいまなざしで見ている社会を作っていくために、大人としてどうあるべきかを考えていきたい」と藤浪さんは笑顔で語った。
仲田の森蚕糸公園。写真左は手作りのブランコ。

子どもが主人公

 子どもが主人公の居場所を創り続けたい、というまなざしの考えが良く表れている活動の1つである「なかだの森であそぼう!」は、毎週金曜日と第2土曜日・第4水曜日の10時~17時に、仲田の森蚕糸公園で開催される。主に乳幼児の親子や小学生が参加し、その人数は毎回平均110人と、地域の方に大人気の活動である。
 参加している子ども達は森のなかで、スタッフが設置したロープの遊具や、大きな枝やドラム缶など、森にあるものを使って自由に遊ぶ。同じロープの遊具で遊ぶといっても、ぶらさがったり、ロープの上に乗ったりと、遊び方は様々である。道具が無くても、水路で水遊びをしたり生き物を探したりするなど、子どもにとってはどこでも遊び場になる。こういった自由な遊び以外にも、森の中で母親達が作る、野菜がたっぷり入った仲田鍋を食べたり、流しソーメンや餅つきなどの季節の行事を開催したりなど、人とつながるきっかけをつくっている。活動に参加している子ども達は、「たき火で何かを焼いて食べるのが楽しい!」、「いろんな人と遊ぶのが楽しい!」と元気いっぱいに話した。
転がしたり、中に入ったりと遊び方は子どもによって様々だ

子育て中の人に焦点をあてる

 まなざしは子ども達と同様に、母親へ目を向けている。「最近のお母さんは、迷惑をかけてはいけない、きちんと躾をしなければならないという社会の中で子育てをしているんです」と藤浪さんは語る。身近に子育てについて相談できる相手がいない、情報が多すぎて困る、など悩みは多い。まなざしは、そういった母親達と共に“居心地の良い場所”をつくっている。
 例えば、まなざし主催の親育ち講座『Nobody’s Perfect “完璧な親なんていない”』では、今子育てについて考えていることや子育ての様子を皆で話し合う機会を設けた。「子育てだけでなく、自分に向き合う時間を持てた」といった参加者の声もあり、自分自身を見つめなおす良いきっかけとなった。こういった講座は母親同士のつながりを深め、自分らしい子育てを見つける糸口となっている。
 「なかだの森であそぼう!」に定期的に参加している方に、まなざしの活動について話を伺ったところ、「まなざしの活動に参加して良かったと思えたことは、子どもにも私にも仲間が増えたこと。皆があったかくなれる場所です」と語った。その場にいた母親達は、子どもの遊び相手をしたり、皆が食べる昼食の準備をしたりと忙しそうであったが、誰もが笑顔で活き活きとしていた。また、自分たちの手で安全な子どもの遊び場を創りたい、という思いから、母親達は日常的に仲田の森に落ちているごみを拾い、子どもが遊べる環境を守っているのだそうだ。

これからのまなざし

 まなざしを運営して良かったと思える時はどういう時ですか。そう尋ねると、藤浪さんはほほ笑みながら答えた。「こういった活動に参加している子ども達の目がキラキラしていて、それを見守るお母さんも楽しそうにしているのを見ている時ですね」。
 代表の中川さんは、「まなざしの今後の目標は、まなざしを地域に根ざし、沢山の人に必要にされる場所にすることです。人と人がつながれる場所にしたいですね」と笑顔で語った。
活動に参加して-執筆担当:朝崎 千秋(立教大学社会学部) 今年で20歳になった私にとって、「子育て」はそう遠くない未来の事になりつつある。しかし、今まで子育てといっても具体的なイメージは湧かなかった。今回の取材は、子育てに悩む母親に将来の自分を重ねてみたり、子育てを楽しむ母親を間近で見たりと、子育てをリアルに感じ取ることができ、自分がどのような子育てをしたいかを考えるいい機会となった。
 活動に参加して一番驚いた事は、子ども達の遊びを作り上げる能力の高さである。広場に転がっているドラム缶を見つけては「ドラム缶に長く立っていられた方が勝ちね!」とゲームを編み出す。泥団子を広場にあるたき火で焼き上げるといったオリジナリティ溢れる作り方を考える。次々と遊びを考える子ども達の柔軟性には舌を巻いた。遊びを編み出す子ども達の目はキラキラしており、見ているだけでも元気を貰えた。
 ケガをするのも、友達と喧嘩をするのも子どもにとっては成長につながる。―自然の中で逞しく、活き活きと遊ぶ子ども達を見て、改めて実感した。もし将来子どもが生まれたら、子どもが自力で困難を乗り越え、成長する姿をあたたかく見守る母親になりたいと思う。
まなざしの事務所で取材をするレポーター