企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

よこすか市民会議「1000年の森をつくる会」

 神奈川県横須賀市では、「よこすか市民会議『1000年の森をつくる会』」(以下、1000年の会)が植樹活動や竹林整備活動を中心に活動している。1000年の会は「よこすか市民会議」の構成団体の一つで、2001年から活動を始めている。団体のメンバーは主に定年を迎えて退職した方たちで、現在メンバーは約70人だ。今回、1000年の会の代表である諏訪芳朗さんにお話を伺った。

いつまでも生き続ける森を目指して

 「よこすか市民会議」は横須賀から海洋文化を発信している団体だが、さらに森林保全の活動を行うために1000年の会を設立した。海洋都市である横須賀の美しい海を守るためには、海と繋がる山や森を守る必要がある。そして、豊かな森づくりは豊かな海を育むという思いからだ。
森づくりはどのくらいの時間の長さで行えばいいのか尋ねたところ、「最近緑化ボランティア団体が出来ているが、長く続かず数年で解散するところが多いと聞く」と諏訪さんは話す。しかし、1000年の会では「横須賀の美しい海を次世代に残すには、長い期間で森を保護する必要がある」と考えている。
 そうした考えは、団体名にもある1000年という数字にも表れている。人間からすれば途方もなく長い時間に渡り森を守る必要があると考えて、1000年という言葉を団体の名前に入れたのだ。

地域の植生に合った種子で森を育てる

 植樹活動では、団体の活動拠点となっているJR衣笠駅近くにある作業所でシイノキやカシノキ、タブノキを苗木から育てている。諏訪さんによると、1000年の会は「1000年先も続く森をつくる」という思いから、「森が長く生きるために地域の植生にあった種子から苗木を育ててそれを植樹するようにしている」という。自分たちでドングリを地元で拾ってきて種子から育てる手間をかけ、外来の植物で地域の植生を壊さないように工夫しているのだ。育った苗木は主にソレイユの丘という三浦半島にある約21haもの広大な海沿いの公園に植樹をしている。かつてはクスノキの植樹にも挑戦したが海に近いソレイユの丘では潮風をうけて枯れてしまうなど、植樹には難しい場所でもあるが、それでもこれまでの13年間で7000本以上の木を植樹してきている。
ポットで苗を育て、水やりの負担を減らす工夫をしている

生活の楽しみを見出す

 長きに渡って森を守り続けようと考えている諏訪さん達は、1000年の会が長く活動できるための工夫をしている。工夫の一つは、活動を楽しむ姿勢を大切にすることにあるという。その結果、1000年の会は13年間もの間活動を続けることができている。
 例えば、活動拠点である同じ山の中にある竹林の整備作業だ。元々手入れがされずに荒れていた竹林は、現在では散歩もできるほどに手入れがされている。体力のいる作業のようだが、諏訪さんは「太い竹が、鋸をひと引きひと引きする毎に、ぐいぐいと深く切り込まれて いき、バッサーと風を切りながら倒れる光景は、実際に鋸を手にして味わえる快感です」と大変な整備作業でも面白さを見つけているようだ。
 また、1000年の会では自分たちで伐採した竹を使って竹細工を作る他に、できるだけ多くの人にも竹に親しみを持ってもらったり、竹製品を愛用してもらったりするために竹細工教室を開いて大人や子どもたちに竹細工を教えることもしている。竹細工教室は小学校でも開いていて、会員の方達は作業に手間取っている小学生にアドバイスをして、小学生が作品を完成させられるように親身に指導する。こうした1000年の会の活動が会員の生活の楽しみになっていて、それが活動に参加し続ける理由にもなっているようだ。
小学校で竹の笛の作り方を教える会員の方

人とのかかわりが1000年への道だ

 諏訪さん達は会員の人間関係も大事にしているという。「成果を求めるよりも、定年を過ぎて第二の人生をどうやって生きていこうかという人が多いですから、人の輪作りとしての考え方がベースにあります」と諏訪さんは説明してくれた。例えば、活動以外でも1年を通して竹の子掘りやビール祭り、芋煮会などのイベントが開かれており、会員同士のつながりを深めている。
 「会社は上下の関係が多いけど、ここでは肩書なんて一切なくて横の関係のつながりで運営されています。そういう横のつながりを求める人が集まってきます」と諏訪さんは話す。人とのつながりを楽しむことで活動に参加し続けられ、結果としてさらに会員同士の仲も深まったという。親密な人間関係に支えられ、1000年の会はこれからも活動を続けていく。
活動に参加して-執筆担当:村重 直佑(早稲田大学法学部) 取材をしている中で、ボランティア活動を通して近所の人たちとの人間関係が広がるのはとても魅力的だと感じた。孤独死や無縁社会といった言葉が広まったように、現代において人間関係で悩みを持つ人は増えている。自分も親の仕事の関係で学生時代は引っ越しが多く現在地元に友達はおらず、もし将来定年になった後に実家に住むとなるととても寂しい気がしていた。しかし、今回の取材を通して定年後からでも地元で知り合いを作ることはできるのだと思うとちょっとだけ元気が出た。外に一歩出れば、人の輪は広がると気付いた取材だった。
活動拠点の作業所にて諏訪さんと